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「俺ねぇ、本当は捕まる予定だったんだー」

「は?」


がしり。肩を組んできた司さんの突拍子もない発言に素で応えると、彼はケラケラと笑った。


「巴が敵対してるヤクザのねぇ、仲間である警察の誰かさんはさぁ、俺と豹牙の母親を刺した野郎の親なんだー」

「……はい?」

「しかも結構偉い人でさぁ、だから今回色々手間取っちゃって、玲央とノエルにはド派手なパフォーマンスをしてもらってそいつの目ぇ向かせてたんだけどさぁ、俺、本当はそいつを刺すつもりだったんだよねー」

「……だから、豹牙先輩に見てるだけって……?」

「うん。俺はねー、小虎くん。あの日から止まったままだった、なにも進んじゃいなかった。豹牙の為だと必死に虚勢を張って、アイツを傷つけて守ったつもりでいた、クソッたれの兄貴のまま、なにも成長してなかったんだよ」

「……」

「一昨日な、撮影終わって帰ってきた玲央にぶん殴られて、俺が捕まって終わるはずの計画をおじゃんにされた。アイツなにしたと思う? 隆二たちブラックマリア引き連れて、嘘のゲームで釣れた売人や素人タコ殴り。しかもご丁寧にそいつら全員警察に、つーか新山たちに突き出して、帰りにチーム解散させてきやがった」


信じられない話に目を見開く。玲央が、ブラックマリアを解散させた? 隆二さんがボロボロだった理由って、それ?
あんぐりと口まで開いた俺に、司さんが艶めいた笑みを浮かべる。


「そんで、てめぇと一緒にすんなクソッたれって、怒られちゃった」

「……どういう、」

「んー……ほら、」


俺と玲央ってさ。呟く司さんの目に、水気が増す。


「兄貴じゃん?」


泣きだしそうな瞳を見つめたまま、俺はなにも言えずに口を閉ざした。

俺はもしかすると、どこかで期待していたのかもしれない。
今回のことは、もっと単純で馬鹿馬鹿しいことを、期待していたのかもしれない。

だけど弟である豹牙先輩を思う司さんのその一言は、彼のすべてを物語るに十分だった。


「だからね、ありがとね、小虎くん。豹牙のこと守ってくれてありがとう」

「……俺には、謝ってくれないんですか」

「うん、謝らない……豹牙は、さ……きっと昔みたいに俺がおかしくなる気がしてたんだろうね、だからあんなに弱っちゃったんだろうね。そんな豹牙を支えてくれた小虎くんに感謝こそすれど、謝りはしない。謝ったりしないよ、俺は」


感謝しかしてやんない。そう言って、彼は俺の頭を撫でる。
ぐっと詰まる言葉を飲み込んで、俺は司さんの手を退かして、笑った。


「じゃあいつか、恩返ししてくださいね」

「もちろん」


差し出した俺の手を、司さんが握る。

そうして、長い長い夜が今、やっと終わりを見せたのだった。




 


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