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腹の上を足で押さえられ、満足に動けないまま慣れた痛みに目を細める。
あぁ、どうしよう。このままじゃ、このままじゃ。


「雄樹のダチなんだよ。今、カシストにいる」

「ふーん、お前、仁のとこにも行ってたのか。はっ、とんだ副総長さんだ」

「は? おい、お前がそれ言うの? それよりさぁ、まずはその汚ねぇ足どけろ」

「あぁ? 誰に喧嘩売ってんだクソが」


やばい。止めなきゃ。
そう思った俺の体は自分が思っていたよりも機敏に動きを見せた。


「あ?」


俺は、兄の足を必死に掴んでいた。
まるでこちらに気を引くような、ひどく幼稚な手つきで。

自分がどんな顔で兄を見ているのか分からない。
それでも兄は、そんな俺を無表情に見つめていた。


「……め」

「……」

「だ、め……」


絞り出した声が届いたのか分からない。それでも腹の上にある足が退き、すぐさま近くなった兄の顔が視界にあった。


「なにがダメだって?」

「……おまえ、が……なったらっ」

「あ?」

「おれ、一人に……なる……っ」


ぐしゃりと、歪んだ音が聞こえた気がした。
見るに堪えないほど歪んでいるだろう俺の顔を、兄が――玲央が見ている。
それも不思議なことに、はじめて見る無表情と怒り以外の顔で。


「……チッ」

「おい、玲央。とりあえず離してやれ。その子はまだバイト中なんだよ」

「……バイト? んだそれ、聞いてねぇ」

「は?」


まるで第三者のような気分で兄と隆二さんのやり取りを見ながら、頭の隅でバイトのことがバレてしまったと危惧していた。
きっと、もう、カシストに行けない。仁さんに会えなくなって、雄樹とも、会えなくなるのかもしれない。

あぁ、嫌だ。嫌だな、そんなの。

そう思っているくせに、すっかり力の抜けたボロ雑巾のように横たわっていると、俺の体は急に浮上した。




 


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