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それから西さんが語る武勇伝を聞き流しながら、豹牙先輩の煙草が空になった頃、背伸びをした西さんが「帰るかー」と言い出した。
廃墟ビルの屋上から望む世界はすっかり夜へ染まっているが、星の明りを受け付けないほどに、地上は眩しい。


「俺とお前ってさ、ちょっと似てると思うんだよなー」


そんな景色を見つめていた俺の頭を、ポンッと叩いて西さんが肩を組んできた。思わず視線をずらして見る豹牙先輩は、恐らく新山さんと電話しているのだろう。


「西さんに似ているだなんて不服です」

「可愛くねぇなー。ちゅーしちゃうぞー」

「止めてください変態が」

「あはは。今度は可愛くなりやがったなー? やっぱりチューしたる」


近づく顔を避けて、思わず威嚇する。そんな俺に西さんは肩を震わせて笑っていた。


「ま、なんにせよ? みっともなく生きてるもんなんだよな、人間様ってのはさ。そんな可愛くてどうしようもない被写体がさ、俺は大好きだよ。そいつらの一瞬を形に残してやりたいって、いっつもシャッター押してるつもり」

「……上から目線ですね」

「ばか、それでいいんだよ。してやるって意気込みでぶつかっていかねぇと、こっちが呑まれちまう」

「のまれる……?」


首を傾げる俺に、西さんはフッと微笑む。


「みっともねぇ奴にはそれ以上みっともねぇ自分じゃなきゃ、なにしたって意味ねぇってこと」


言葉の全てを理解することはできない。それでもほんの少し、本当に少しだけ分かるような部分が心を突いてくるものだから、俺は思わず頷いた。そんな俺を認めた西さんはまた笑いだし、もう一度俺の肩を組んでくるのであった。




 


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