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カシャッ、と小気味良い音が廃墟ビルの屋上に響いた。


「で、辿り着いたのがカメラだったわけ。写真ならその瞬間を形に残すことができんじゃん? そしたらもーハマったハマった。毎日誰かの喧嘩を撮りまくった。時には殴られた。あ、もちろんやり返したが。
なんだろうなぁー……、なんかさぁ、一生懸命? なんだよな。もがいて苦しんでいっぱいいっぱいな不良どもがさ、すげぇ可哀想に見えたのかもな? ま、余計なお世話だろーけど?
でもさ、同時に好きだったねぇ。がむしゃらな不良が可愛くも見えてさ。もっと多くの人にこいつらの馬鹿で幼稚な姿を見せなきゃって思って売り込んだ。したらヒットして、今や俺はプロカメラマン? みたいな?」


あははっ! 笑う西さんの振動で柵が揺れる。ギシッと嫌な音がして、ボルトが一つ外れた。


「図らずしも、俺は悪友のおかげで不良の可愛い一面を知れたわけだが、きっとそういうことだったんだろうな。司が俺に見てるだけって役目を押しつけたのは、証人が欲しかったんだろうな……だってそうじゃなきゃ、誰にも知られず終わっちまう人生なんて、寂しいもんな」

「……」


見てるだけ。それは恐らくブラックマリアにおけるスペードのエースを指しているのだろう。現在のエースである豹牙先輩が、ただ黙ったまま、しかし必死に西さんを見つめている。


「見てるだけってのは楽だよ。でも時には当事者以上に残酷だ。でも見てなきゃいけない、見てやんなきゃいけない。その意味が分からないままなら、いっそ司から離れたほうがいいぞ、豹牙」

「……うっせぇよ」


あははっ! またも笑う西さんの振動で、ついに柵が曲がった。慌ててこちら側に引く西さんに、俺は苦笑したのだった。




 


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