×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

21 - 16



あっさがえりー、あっさがえりー。なんてよく分からないコールを続ける新山さんに、それまで黙っていた仙堂さんがその頬をぶん殴る頃、俺たちはマンションに到着した。その時間、およそ二分半である。

酒を摂取したことで少し気持ちが解れただろう豹牙先輩を支えながら、朝でもハイテンションでスキップする新山さんの後ろを歩く。ガチャリと鍵を開けた扉の向こうへ続いた瞬間、部屋の中から叫び声が聞こえた。え、なに。おっかなびっくりする俺が、やはり先を歩く新山さんに続くと、急に覚醒した豹牙先輩が俺の名を呼んだ。


『あ゛、あぁ、あああ゛〜〜っ!』

『おいおい、まだぶっ壊れんじゃねーよ。おら、てめぇで売ってたヤクだろーが、笑えよ豚』

『いぎっ、うぎぃいいっ、いいっいぎゃあああっ!』


小虎。そう呼ぶ豹牙先輩の声が、部屋の中で木霊する叫び声に掻き消される。リビングに用意された無駄にでかい液晶テレビに映っているそれに、俺は茫然と立ち竦んだ。


『あははっ、きったねぇ鳴き声だなぁおい、ほら、次は足の爪剥がすぞ。抵抗しなくていーのか? あー?』

『ひぎっ、ぎゃめ、やめで……っ、やめでくだざっ』

『はい、いちまーい』

『ああぁあああ゛っっ!!』


テレビに映るそれは多少画質が荒いものの、どこか暗い部屋で行われる――拷問そのものだった。
そしてなにより、される側もする側も、俺には見覚えがある。と、そこで目の前が暗くなった。どうやら豹牙先輩が俺の視界を塞いだらしい。


「止めろ……今すぐその胸糞悪い動画を止めろっっ!!」


そして間近で聞こえた怒声に、図らずしも体が跳ねた。
ふっと静かになった部屋の中、こちらへ歩む誰かの足音。目の前で立ち止まったと思いきや、視界を塞がれた俺の耳元で呟いた。


「お前には縁がねぇのかもなぁ。いっつも間の悪いとこばっかだ。なぁ、そう思うだろ? 小虎」

「……巴、さん」


漏れ出た俺の声にくすりと微笑む巴さんの声が、どこか遠くで聞こえた気がした。




 


しおりを挟む / 戻る