「では再会を祝しまして〜、かんぱーい!」
その日の深夜、いつもより一時間早く閉店させたカシストにて、俺たちは久しぶりに酒盛りをしていた。豹牙先輩が新山さんに連絡を入れてくれたらしく、今日は朝帰りでもなんでもしていいと許可まで下りたのだから、存分に楽しんでやろう。
「えっちゃん、えっちゃん。えっちゃんはなんでカシストにいるんですかー。さっさとデスリカに戻ればいいんじゃないですかー」
「なに雄樹、喧嘩売ってんの? よーし、仁さん、ちょっと雄樹押さえてください。このアホを三つ編みにしてやります」
「おし、まかせた」
「仁さんっ!? ちょ、えっちゃん!? トラちゃん! トラちゃんシロー、助けてぇっ!」
酒を飲んでハイテンションな雄樹が仁さんに押さえられ、久しぶりに楽しそうな豹牙先輩に三つ編みを施されているが、俺と志狼は当然助けることなどなく笑っている。というかなんで雄樹は豹牙先輩のことをえっちゃんって呼ぶんだ?
「小虎」
「ん? なに?」
「俺、来月からこっちに戻ることになった」
「え? ……もう、いいのか?」
「んー、うん。和解できたと思うよ、一応」
ソファーで騒ぐ雄樹を尻目に、ぽつりと呟く志狼の瞳を覗きこむ。そんな俺に微笑む志狼はやはり、少し大人っぽくなった。
「だから小虎、ありがとね」
「ばーか、俺はなにもしてねーよ」
「ううん。小虎はいっぱい俺にしてくれた。側に居てくれた。それだけで俺、前よりちゃんと強くなれた」
「……志狼」
だからね、とつづける志狼が俺の頭を撫でる。
「だからね、小虎。今度は俺が小虎の側にいるよ。だからそんな無理して笑うのは、もう止めて?」
「……しろ、」
別に無理していたつもりはない。楽しいときはちゃんと楽しいと思っていたし、今の生活もまぁ、賑やかだと思う。けれど笑うたびに、口の端が引きつっていくのもまた、事実だった。
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