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そんなある日、カシストにひょっこり現れた人物に俺は目を丸くした。


「しろー……?」

「久しぶり、小虎。なんか痩せたね?」


綺麗に染め抜いた銀髪は黒髪に、今時珍しい短ランは普通の丈に、指に嵌められたたくさんの指輪は綺麗さっぱり無くなった、そんな志狼の姿。髪色のせいか少し大人っぽくなった、しかし変わらずイケメンな志狼が優しく微笑む。


「シロー、遅ーい!」

「ごめんごめん、電車が遅れて。これでも急いだ方なんだよ?」

「ならゆるーす!」

「はは、ありがとう」


そんな志狼に茫然とする俺を余所に、後ろから飛び出してきた雄樹は志狼と親しげに話している。会話の内容からまさか、と思ったが口をパクパクさせている俺に向き直った二人が笑った。


「トラちゃん変な顔〜」

「俺としては久しぶりの再会に、笑顔でいて欲しかったんだけどな」


なんだか頭の中がごちゃごちゃするが、そう言って笑う二人が同時に俺の頭を撫でてきた瞬間、不覚にもその場に崩れ落ちた。
トラちゃん!? 小虎っ!? と、慌てる二人が片腕ずつ支えてくれるが、俺は緩み始めた頬を無視してそんな二人に抱き着く。


「全然意味分かんねーけど、けど……なんか、すっげー嬉しい……っ」


さすがに涙が出ることはなかったけれど、ちょっと鼻声なそれを聞いた二人が肩を揺らして笑うから、俺はさらに抱き着いたのだった。


ある日突然、説明もなく豹牙先輩がカシストで働き始めたこと、学校でも常に彼が側にいること、そして俺の元気の無さはさすがの雄樹にも不信感を与えるには十分だったらしい。それでも素直に相談しない俺に痺れを切らした雄樹は、実家にいる志狼を呼び寄せたのだという。
その行動力と考えにはやはり突っ込みを入れたくなったが、雄樹らしい優しさについ感動したことだけは、絶対に本人だけには言うものか。




 


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