そうして身柄を確保されたらしい――実際は監視下に置かれている――俺は、この高級なマンションの一室で当分暮らすこととなった。個室は全部で三つあり、俺・新山さん・仙堂さんに割り当てられた部屋にはそれぞれ荷物が運び込まれていた。とはいえ本当に必要最低限のものしかなく、俺に限ってはダンボール一箱に詰められた服だけである。誰が詰めたんだ、これ。
よくよく聞けば、どうやらここは司さんの住む部屋の隣らしい。おかげで豹牙先輩の送り迎えは断然楽になったはずだが、あの日を境に彼はこの一室のリビングに寝泊まりするようになった。
「小虎、梅粥三つよろしくな」
「はい」
そしてその流れからか、デスリカで働いていたであろう豹牙先輩は、俺に合わせてカシストで働き始めたのである。それについて雄樹からそれはもう激しく追及されたのだが、当の本人が口を割らない以上、俺にはなにも言えん。許せ、雄樹よ。
あのマンションに移動してから早三日、いつものようにカシストでお粥を作る俺の元へ忍び寄ってきた雄樹が背中に貼りつく。
「……トラちゃん、俺にまたなんか隠してるでしょー……」
「俺が隠し事できるように見えるか? ほら、お粥できたぞ、運んで来い」
茶化して笑う俺に納得がいかないのか、一向に離れる気配のない雄樹の頭を仁さんがパコッと叩く。
「雄樹、働かねーなら給料やらねぇぞ?」
「うー……」
恋人に叱られたからか、それとも給料欲しさからか、やはりまだ納得いかない表情を浮かべながらも、雄樹はしぶしぶお粥を運びに行く。そんな雄樹を見届けたあと、こちらに向き直った仁さんが俺を見つめるが、俺は俺で苦笑を浮かべることしかできなかった。
豹牙先輩と一緒に部屋に帰ると、本当に仕事をしているのか疑わずを得ない新山さんと仙堂さんを交えて夕飯を頂き、各自部屋で睡眠をとる。新山さんのおかげで静かとは言えない生活だが、それでももう、俺のなにかは限界を訴えていたと思う。
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