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その翌日から、提携業務は開始された。
最初のお粥注文は隆二さんからで、デリバリー役は俺。
ここぞとばかりに隆二さんを怨んでみたりもしたが、バイトをクビになりたくない俺はしぶしぶ了承した。


「……」


いませんように。いたとしても、見つかりませんように。
エレベーターの中で、何度も何度も祈り続ける。

壁につけた背中がじっとりと汗をかいているのに気付いて、手に持つお粥を床に叩きつけようかなんて、そんなくだらないことを思う。
しかしエレベーターはたかが一階の距離を素早く上がり、俺をデスリカの出入り口まで運んだのであった。


「……」


すぐ右にあるカウンターのほうへ近づき、緑色の変な髪をしているスタッフらしき人に声をかけた。


「すみません、カシストの者ですが、お粥のデリバリーです」

「え? あぁ、はい。なんか隆二さんが直接持ってきてくれって。ほら、あの奥にある螺旋階段の上。あそこにいますんで」

「……え?」


冷水でも浴びたような、ゾッとした感覚がつま先から這い上がる。
考えたくもないが、恐らくあの螺旋階段の上にあるあの場所に、きっとブラックマリアの人たちがいるはずだ。

そこに、行け、と?


「あの……玲央……朝日向玲央、も、いますか?」

「玲央さん? いますよ。でも下のヤリ部屋いるから会えないと思うけど」


ヤリ部屋?
可笑しな単語に一瞬脳みそがグラついたが、目的地に兄がいないと知った俺は安堵の息を吐いた。
それなら、行ける。


「そうですか、分かりました」

「うん、よろしく。あ、それから追加で梅と卵三つお願い」

「はい」


見た目の奇抜さとは違って親切なスタッフに頭を下げ、俺は螺旋階段へとつづく人のいない狭い道を通っていく。
ビルの地下一階、ワンフロアがまるごとクラブになっているデスリカは、奥のほうに螺旋階段があり、その上には一段と異様な雰囲気を放つテーブルやらなにやら置かれている場所がある。
その下には赤いカーテンで隠された簡易な部屋が恐らく一つ。
カウンターの横のほうにもいくつか部屋らしき入口があり、その中でなにが起こっているかなど想像もしたくなかった。




 


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