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- ナノ -

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預かるというのは、どういうことだ?
……とりあえず、落ち着こう。ここで事を荒げても自分の立場が悪くなるだけだ。


「……ノアさんを追っていると言ってましたね、そのことで俺は呼ばれたんですか?」


玲央が絡んでいることでつい頭に血が上る自分を言い聞かせ、探り探りの質問を口にした俺を黙って見ていた男が一枚の写真を机に置く。


「見覚えはあるね?」

「……はい、あります」


机に置かれた小さな長方形の中に写るそれは、間違いなく俺だった。俺と、ノアさんが荷物の受取人として指定していた緑のカーデを着た男だった。
爪先からじわり、じわりと這い上がってくる寒気に似たなにかは、いとも容易く俺を不安のどん底に突き落とす。


「もう分かったかもしれないが、このホルダーバックの中に入っていたのは麻薬だ」

「……っ」


――あぁ、やはり。
話の流れで覚悟していた真実を他人の口から聞かされるだけで、たったそれだけでこんなに目の前が真っ暗になるだなんて。
足元から伸びる不安を振り払うように首を左右に振った。それが男を勘違いさせたのか、クスクスと笑われてしまう。


「大丈夫、君に罪はないよ――バレなければね」

「!」


なのにこんな俺をさらに追い詰めるように、男は嘘くさい笑みを浮かべたまま残酷な言葉を投げつける。
最初から、俺の立場などなかったに等しいじゃないか。


「海外では例え騙されて運んだだけでも国内に持ち込んだ時点で死刑もありうる。日本人は平和ボケしてるからね、君みたいに簡単に人を信用して馬鹿を見る輩も多いんだ。なぁに、落ち込むほどのことじゃない――言ってる意味、分かるね?」

「……俺に、なにをさせる気ですか……」


今になってやっと分かる。
俺は今、とんでもない化け物と対峙しているのだ。
鋭い牙と己の身一つで生き抜く獣すら銃で撃ち殺す、狡猾で残酷な狩人。この人は今、牙をもがれた俺を狩っている。




 


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