それから数分後、若い男性がお茶とコーヒーを持って部屋に戻ってきた。
目の前に置かれた紙コップのそれを凝視すると、さぁ飲んで飲んでと勧められてしまう。
「あの、それでお話というのは」
「んー? 君は歳に合わず礼儀正しいねぇ。感心感心、いやぁー俺もさぁ、飲みの席で最近の若い子は〜なんて言いたくないのよ? ほんとは。でも言わざるを得ないこともまーあるわけじゃん? ホチキス一つまともに留められないとか本当、最近の若い子は〜って言っちゃうよねぇ」
「……はぁ」
「その点、君、小虎くんは素晴らしいね! お行儀よくしてるし、ちゃんと慣れないながらも敬語を使って相手を敬うことを忘れない。なによりお粥が美味い」
「――え?」
マシンガントークに呆気を取られる俺に冷水でもかけたかのような発言は、その場になんの不自然もなく溶け込もうとする。それがあまりにも自然で流暢で、ひどく恐ろしかった。
「話、話。うん、話をしよう。まずはどこからがいいかな? やっぱり物事のはじまりからがいいかな?」
「……あなたは……司さんに協力を求めた人、ですか」
これまでの思わせぶりな発言をまとめた結論を問うと、男はまるで司さんのような、いや、それ以上に悪い笑みをしてみせる。
「ほら、やっぱり君は素晴らしい」
「……」
食えない態度に口を閉じる。そんな俺に今度はニッコリ微笑む男がコーヒーに口を付けた。
「…………あっまっっ!!」
だが次の瞬間、そう叫んで顔をしかめたのであった。
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