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「トラちゃんトラちゃんトラちゃんトラちゃ」

「うるさい、きもい、うざい、黙れ」

「まさかの言葉攻め!」


現在、バー、カシストにてバイト中の俺と雄樹は、すでに五回目に達したやり取りをまた繰り返していた。
その原因というのが、俺の目の前で梅お粥を食べている男、隆二さんである。

あの日以来、なぜか隆二さんは頻繁にカシストへ訪れるようになった。仁さんは嬉しそうに受け入れていたが、いかんせん雄樹は子供だったのである。
隆二さんが来ると、雄樹は接客もそぞろに俺や仁さんに構ってアピールをしてくるのだ。主に俺がその最たる被害者である。

仁さんいわく「お前を取られそうで焦ってんじゃねーの?」とのことだが、どう取られろというのだ。


「あー、うぜぇ。お前仕事しろよ」

「してるもーん! ちゃんとしてるもーん!」

「してねぇだろうが、さっさと接客行ってこい」


新メニューとして採用された中華粥を作りながら、俺は雄樹に言い放つ。
そんな俺たちの隣では隆二さんと仁さんが楽しげに話をしていた。

くそ、俺もあっちに混ざりたい。


「ねートラちゃーん。今日もダーツ行こー?」

「いいけど。じゃあちゃんと仕事しろよ? じゃなきゃいかねー」

「じゃあする!」

「よし、行けポチ」

「わんっ!」


あぁ、アホだ。アホ山アホ樹だ。
しみじみとやつの背中を見ながら、疲労を顔に出す。


「お疲れさん」

「……助けてくださいよ」


そんな俺に笑って声をかけてきた仁さんは楽しそうで、お粥を食べている隆二さんも俯きながら笑いを堪えていた。いっそ思いっきり笑ってくれたほうがマシだ。


「いやぁ、最近の雄樹は俺よりトラに懐いてんからなぁ」

「なに言ってんですか、雄樹の一番は仁さんでしょ」


がっくりと肩を落としながら思ったことを口にすれば、仁さんも隆二さんも目を丸くして俺を見ている。


「? なんですか?」

「い、やー……トラ、お前ってさ、意外と鋭いよな」

「は?」


なんだか不審な目つきで視線を逸らす仁さんの言葉に、俺は少しも意味が分からなかった。




 


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