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「じゃ、俺はこれで」

「おう」


お粥を食べ終えた隆二さんは、長居する気もないのかすぐ席を立つ。
その視線が一度雄樹のほうに向いたが、雄樹は若干ふてくされたまま客に弄られていた。


「おい、隆二」

「はい?」


それを見て困ったように眉を下げた隆二さんを見かねて、仁さんが声をかける。
つられて俺も仁さんを見れば、彼は憑き物でも落ちたような表情をしていた。


「いつでも好きなときに来い。アレキサンダーくらいなら出してやる。ついでにお粥も、な」

「……仁さん」


はっきりと、だけど柔らかな声が届いたのを俺は見た。
仁さんも隆二さんも照れくさそうな笑みを浮かべ、互いに視線を交える。


「はい、また来ます」

「おう」


長年の因縁が溶けていくような、そんな空気なんだと思う。
ずっと背中に張り付いて、取れそうにもない不安要素がやっと、やっと落ちたような、清々しく、爽やかでいて少し恥ずかしい。
こういう空気を、人はなんと呼ぶのだろう。

俺はそんなことを考えながら、上の階へと消えていく隆二さんの背中を見送った。


「悪いな、全然分かんねぇだろ」

「え? なにがです?」

「俺たちの話」

「あ、あー……まぁ。でも、いいんじゃないですか?」


エレベーターの扉が完全に隆二さんの姿を遮断したあと、苦笑を浮かべた仁さんに頭を撫でられた。


「いいってなにが?」

「んー、なんつーか、空気? うまく言えませんけど、居心地が悪いわけじゃなかったです」

「ははっ、なんだそれ」


なんだか嬉しそうな仁さんはいつになく俺の頭を撫でまわす。
大きくて筋張ったその手が何度も何度も頭上で動いているのを、俺は言いようのない気持ちで受け入れていた。

それから、俺と仁さんは拗ねた雄樹を慰めるためにさっさと店じまいをして、上にあるダーツバーで朝まで遊んだのであった。




 


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