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未だ驚く玲央のほうへもペコリと頭を下げると、匡子さんはニコニコとしながら俺を隆二さんと玲央のあいだに座らせてきた。いやいやいや、視線が、視線が痛いですって。

というか今回のこと、玲央も隆二さんも知らなかったんだ。


「コトちゃん、だっけ? なにか飲む?」

「……」


この状況をさっそく楽しんでいるのか、隆二さんは微笑みながらペットボトルを指さしている。
うしろから匡子さんが「好きなの飲んでいいのよ〜」と言うので、首を横に振り、自分でお茶を取った。

――と、いうよりも。先ほどから女性モデルの視線が痛い。それに加えて今回のようなケースは珍しいのか、男性モデルたちも俺のことを観察し始めたのだ。

なんだか急に緊張してしまい、お茶に口をつけるもあまり飲み込めない。

……女性モデルの人たち、綺麗な人ばっかりだなぁ。
男性モデルの人たちもタイプの違うイケメンばっかだし……俺、明らかに場違いだよな?

今さら怖気ついたのか、こっそり息をつく俺の背中を匡子さんが優しく撫でる。


「大丈夫よコトちゃん、あなたは玲央と隆二に身も心も預けなさい。あとは二人が上手くやるわ」

「……」


その優しさは嬉しいけれど、なんだか胸の奥がモヤモヤする。
ちらりと横目で見た玲央は、少しだけ眉をひそめて煙草を吸っていた。

そうして不安を抱えながらも、ついに撮影は始まってしまった。
見覚えのあるカメラマンが撮影場所に現れた瞬間、彼は辺りを眺め、少しだけ眉をひそめてカメラの前に立った。

匡子さんに背中を押され、隆二さんに手を引かれ、俺は未知の世界へと足を踏み入れたのだった。




 


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