カメラのうしろに置かれた二つのテーブルには、女性モデルと男性モデルが分かれて座っていた。
男性モデルの中で平然と煙草を吸いながら雑誌を見ている玲央を見つけたとき、不覚にも安堵してしまったのは秘密にしておこう。
……それよりも、女性モデルからの視線が痛い。
とりあえずセミロングのウィッグで顔を隠すように俯いていると、女性モデルたちと一緒にいた一人の男性が近づいてきた。
「匡子さん、今日はよろしくお願いします」
「あら五十嵐さん、こちらこそよろしくね。あぁそうそう、今回のパートナーの話だけど、事前に話していた通り、玲央は面倒な性格でね、撮影前に慣れてもらうためにもコトちゃんはこちらでお借りしていいかしら?」
「はい、もちろんです。コト、匡子さんたちに迷惑かけないようにしなさい」
会話の流れから恐らくマネージャー的存在だろう男の言葉に、とりあえず頷いておく。
それを見た二人が一言二言会話をすると、俺は匡子さんに背中を支えられながら玲央のほうへ向かった。
「玲央、隆二。今日二人のパートナーになったコトちゃんよ。挨拶しなさい」
そう言った匡子さんの言葉に、隆二さんは席から立ち、玲央は面倒くさそうに視線だけをこちらに向けてきた。
今は相手が俺だからいいものの、それでいいのか玲央。
と、思っていたのも束の間、隆二さんは俺に気づいた瞬間、口元を隠して笑いだした。玲央は完璧にこちらへ顔を向け、目を丸くしている。
「今日はよろしくお願いします。隆二です。こっちが玲央……少し面倒な性格だけど、俺もいるし、安心して?」
などと笑いながら言ってくる隆二さん。差し出された手はあえて触れず、深く深く頭を下げておく。……女性モデルの視線が痛い。
← →
しおりを挟む /
戻る