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そして数あるコーデからまずは一着。さぁさぁ着てみて! とはしゃぐ匡子さんたちに促され、いそいそと着替えてはみたが……足を誤魔化すために穿く白タイツにかなり抵抗がある。いや、分かってる。これを穿かなきゃこの時間は永遠に終わらないと、分かってはいる。
だけどふとしたとき思ってしまうのだ。

俺、なんでこんなことしてんだっけ? と。


「……き、着替えました……」


いくらなんでも体つきでバレないかなんて苦汁を舐め、なんとか着替えを済ませる。せっかくの化粧を涙で流したくなるほど、悔しさと恥ずかしさがいっぺんに襲ってくる。それでもここまできたらやりますよ、やってやりますよ。

カーテンを開けて匡子さんたちの前に姿を見せた瞬間、部屋はシンと静まり返った。


「……あの?」


女性物の服とかよく分かんないから、着方間違ったかな?
ちゃんと前後ろ確認したつもりだったんだけど……。
なんて思っていた俺の前に足早で来た匡子さんは、勢いよく俺の肩に手を乗せた。じぃいんと響きましたが。


「かんっっっっぺきよっ!」

「……は、ははは」


いやもう本当、ここまで来たら開き直れます。

それから慣れないヒールに悪戦苦闘する俺と上機嫌な匡子さんは仲間を引き連れて撮影場所を目指した。
まずはデートを想定して外での撮影らしい。現場までは車を飛ばすと匡子さんは笑っていた。
道中耳打ちされた今日かぎりの俺の名前は「コトちゃん」だという。言わずもがな、俺の名前から最初の二文字を取っただけである。


「コトさん入りまーす!」


撮影場所についた瞬間、知らない男の人が辺りにそう叫んだ。
思わず驚く俺をよそに、周りからは「よろしくお願いしまーす」と声が上がる。
さすがに声を出すべきか匡子さんに目線を向けると、彼女は俺の代わりに「はい、よろしくー」と一言。

俺、今日は絶対、匡子さんから離れたくない。




 


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