そんな事態で撮影は延期。けれども雑誌の発売日は延期しない。
特集枠は両社とも盛大に取ってしまったらしく、いまさら埋め合わせするネタを出すには時間が足りない。そもそも前々から今回の特集の宣伝をしていたのだから、それを今になって変えることだけは絶対にしたくない。
そうして幅広い人脈を持つ匡子さんが大手女性誌の社長に持ち出した提案が、その日限りの女性モデルを、大手女性誌側のモデルとして採用する。ということだった。
はて? 一体その提案のどこに大手女性誌のメリットが?
などと思うのは至極当然だが、メリットはあったのだ。いや、あるのだ。
女性人気の高い玲央と隆二さんが大手女性誌に載ることで、売り上げが伸びるというメリットが。
しかもゼロワンと大手女性誌とで同じ特集ではあるけれど、違う写真を載せるというので一方に客が流れるのもしっかり阻止。さすが経営者は違うなぁ――色々突っ込みたいことはあるけども。
でもまぁ、だからって……
「絶対っ、無理ですっ!」
俺が首を縦に振ることはありえないのだけど。
「そこをなんとか! お願いよ小虎くぅ〜ん!」
「いやいやいやいや、俺じゃなくて普通の可愛い女の子を写真に収めてくださいよ。なんで俺なんですか」
首を横にブンブン振りながら、精いっぱい否定の言葉を出す俺に、それまで低姿勢だった匡子さんの目が光った気がした。
「そう……そこなのよ、小虎くん」
「……え?」
「今回、女性モデルが争うほど、玲央と隆二のパートナーの座は大きいのよ! そこを普通の女の子を使ってみて? 嫉妬でその子……撮影後もひどい目にあうんじゃないかしら?」
「……へ?」
「だけどその点、小虎くんなら女装でしょう? 撮影が終わったらそんなモデルは写真以外、存在は消えてしまうの! 女性モデルたちの嫉妬はその日だけになるわ!」
う……お、おぉう?
た、確かに言われてみれば……そう、かもしれない……な。
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