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ミーンミーン、蝉の声。チチチ、チチチ、鳥の声。
縁側に腰を下ろして耳を傾けると、山の中からは色んな音が聞こえてくる。


「トラちゃん」

「ん?」


そんな俺の横に、いつのまにか来ていたばあちゃんがちょこんと座っていた。


「あのね、トラちゃん。本当は言おうか迷っていたのだけど、どうしてもトラちゃんに聞いて欲しいことがあるの」

「……ん、なぁに?」


じいちゃんは見当たらず、玲央はお風呂に入っている静かな時間の中で、ばあちゃんは少し困ったように微笑みながら俺の手を取った。


「アルバムを見せたときに、少し話したけれどね。レオちゃんも娘同様、あの人から暴力を受けていたわ」

「……うん」

「確かにね、暴力を受け始めたのは、レオちゃんがトラちゃんに手をあげてからなの。でもね、レオちゃんは小さい時からお母さんが苦しむ姿を、ずっとずっと、見てきたの」

「……ん」


自然から聞こえる音は穏やかで、ばあちゃんの語る言葉がゆっくり溶けていく。でもどれ一つ、こぼさずに抱えていきたい。


「……レオちゃんは、小さい時からあの人のことが嫌いだったけれど、トラちゃん、あなたはとても懐いていたわ。だからね、あの人もトラちゃんだけは絶対に手放さないって、親権争いでも主張したのよ。
だから……なのかしら。多分ね、レオちゃんはだからトラちゃんのこと、嫌ってたんじゃないかしら……って、私は勝手に思っているのだけど」

「ばあちゃん、いいよ、俺は大丈夫だから、ね?」


言葉を濁して俯くばあちゃんに微笑みを向ける。そんな俺を見たばあちゃんは一度その目を伏せてから、ゆっくりと開いた。


「……娘が死んで、レオちゃんを預かったときにね、レオちゃん……レオちゃんは、お母さんのお墓の前で私たちに頭を下げたのよ」




 


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