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延々とつづく田んぼのあぜ道に軽トラックが止まっている。
180度見回してみても、隣家と呼ぶには遠すぎる距離にしか民家は建っていない。
村、と呼ぶべきなのだろうか。郵便局とか銀行とか、そういう施設はないのだろうか?

夕飯を作るまで、二人で散歩でもしておいで。
そう言われ、俺と玲央は家の庭を散策していた。
――といっても、玲央は柴犬と戯れているだけなのだけど。


「その犬、名前は?」

「達郎」

「……し、しぶいね」


玲央と達郎を背に田んぼを眺めていただけの俺が二人に近づくと、どうやら玲央はリードをつけていたらしく、準備を終えた今、ゆっくりと立ち上がった。


「お前、持つか?」

「え? いいの? 大丈夫?」

「大丈夫だろ。つーか、リードなしでも散歩できるしな、こいつ」


玲央の手から赤いリードを渡される。まだ若いのだろうか、いや、結構世界を知ったような目をしている達郎が、どこか期待のまなざしを俺に向けていた。だから初めて犬の散歩をする俺は、無駄に力を込めてリードを握り直したのだった。

都会では見かけない土のままの道路は、すぐ脇に草が生い茂っている。
田んぼばかりで日陰はないが、夕方なのでそこまで暑くはない。ただ、燃えるように真っ赤な夕陽が山の向こう側に隠れていこうとする様は圧巻だった。


「思ったより歩くの遅いね」

「リード持つ人間に合わせて歩くんだよ、こいつ」

「え? 達郎、賢い」

「犬に気ぃ使われてることに気づけよ」


俺の隣に並ぶ玲央が呆れたように笑う。そんな姿が珍しいとでも言うように、タイミングよく達郎がこちらを振り向いた。あまりの偶然に思わず笑みをこぼすと、勘違いした玲央がこちらに怪訝な顔を送ってくる。

あえてそれに気づかない振りをして歩みを進めると、玲央もなにも言わずに隣を歩いた。




 


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