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すでに寝室を知っている玲央が旅行鞄を置いて戻ってくる頃には、冷たい麦茶とお茶請けまで用意されていた。
祖父が笑顔でお茶請けはハッカ羊羹だと説明してくれる。それに応えている俺の横に、ドカッと玲央が腰を下ろす。


「トラちゃんは嫌いなものってあるかしら?」

「いえ、なんでも食べれます」

「そう、良かったぁ」


戻ってきた玲央に麦茶を出す祖母が尋ねてきた。まるで春のように温かな笑顔に、少しドキリとする。
俺の右隣に座る祖父も、優しいだけじゃない、ちゃんと頼れる人だと見てとれる。
……この二人が、母さんが死んでから、玲央を育ててくれたんだ。


「少し休んだらどこか見に行くの?」

「いや、今日はどこにも行かねぇ。移動で疲れただろうしな」


俺たちの予定を玲央にきく祖母と、それに答える玲央の姿に不思議と胸がジーンとした。
二人には当たり前の会話なのかもしれない。けれど、家族を垣間見せる玲央の姿が他にあることが嬉しいのだ。

そんな二人を羨ましげにでも眺めていたのだろうか、右隣に座っていた祖父が頭を撫でてきた。
驚いて身を固めるが、なんどもなんども、優しく大きな手のひらで撫でられるうちに、「緊張しなくていいんだよ」「今日から君もここの一員だよ」――そう言われているようで、俺の目元は自然と緩んでいた。


「ごめんね、急に撫でたりして」

「いえ、バイト先でよく、撫でられますから」

「バイト先で? 店長さんとか、かな?」

「はい、すごく優しくて、頼りになるいい人なんです」

「そう」


祖父の目元が柔らかく緩む。加齢と共に刻まれただろうシワがくしゃりと浮き上がれば、心から歓迎してくれているその気持ちが伝わってきた。




 


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