「あ、でも口って細菌が多いって昔、なんかのCMでやってなかったか?」
「……あー……、やってたかもなぁ」
純粋に謎だけを追っている隆二が結論を出したので、今度こそ終わりだと煙草に集中した途端、豹牙がまた馬鹿なことを言い出した。
「じゃあ玲央って、キスは下手なんだ?」
……はぁ?
「だってキスしねぇんだろ? 上手になるわけもねぇよなぁ? あぁ、経験不足ってやつだ」
「お、おい豹牙、もう止めとけって」
「いやいやー、だって本当のことだろ。な?」
……マジで殴ってやろうか、こいつ。
「ん? つーかさ、もしかして玲央のファーストキスって俺?」
「はぁ!?」
さらに馬鹿なことを言い出す豹牙にため息をつく俺の前で、隆二が珍しく声を上げた。うっせーよ。
「いや、あれは不可抗力だったけどよ。本当にファーストキス、俺?」
「んなわけねぇだろ」
固まる隆二を無視して豹牙に応えれば、やつの笑みが深くなる。……どうせ次の質問なんて決まってる。
「じゃあファーストキス、誰なんだよ」
……ほらな。
「さぁな、覚えてねぇよ」
「はぁ〜? 変な潔癖持ってる玲央がファーストキス覚えてねぇとか嘘だろ?」
「……つーかお前ら、本当になんなの」
平然と会話を進める俺と豹牙に、ついに隆二が頭を抱えだす。
「ははっ。ちなみに隆二は誰だった?」
「え? 俺か? ……最初の彼女だったと思うけど、ちゃんと覚えてはいねぇよ」
「ふーん? まぁ俺は司だったけどさ」
「うん、そうだと思った」
二人の会話を耳に、そろそろ面倒になった俺が女を抱きに行こうか思惑していると、隆二が階下を見ながら「あ」と声を漏らした。
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