「玲央ってヤるときキスしねぇの?」
「はぁ?」
ある日、溜まり場にしているデスリカにて、豹牙が突然こんなことを言い出した。
余計な詮索をするつもりなどないのだが、なぜかニヤついている豹牙は隆二の制止も聞かずに言葉をつづける。
「このあいだ玲央のお下がりに襲われたんだけどよ、その子が玲央はキスしてくれないとか喚くから気になったんだよなぁ」
「……俺が潔癖症だって、知ってんだろ」
面倒なので理由を告げるが、豹牙は納得しておきながらまだ質問をつづけた。
「でもそれって料理の話だけだろ? キスは別じゃん?」
「知らねぇ女の口に舌なんて入れたくねぇ。気持ち悪い」
「いやお前、穴には息子突っ込んでんじゃん」
「それは別だろうが」
別かぁ? なんて首を傾げる豹牙の横で、隆二がこめかみを抑えながらため息をつく。
「お前ら……たまたま周りがいないから良いものの、そういう話を突然すんなよ」
「大丈夫だって隆二、さすがにそこまで俺も玲央も馬鹿じゃねぇよ」
な? とか言って同意を求める豹牙を無視して煙草に火をつける。つーか、くだらねぇ。
「……でも、俺も気になってたんだけどさ、つまり玲央は自分の口になにか入るのが嫌なのか? よく分かんねぇんだよな、玲央の潔癖」
「俺も俺も」
……はぁー。なんで隆二まで乗ってくるんだ。馬鹿なのか、こいつら。
「お前ら、油まみれで焦げだらけの鍋で作った料理を食えるか? 無理だろ、んなの」
「……なんとなーく分かったような?」
律儀に応えてやると、隆二と豹牙が同じ方向に首を傾げる。その姿は少しだけ面白いと思った。
「つまり玲央にとって知らない女の口は油まみれで焦げだらけの鍋だと?」
「……」
俺がイラつくことが分かっていて、そんな言い回しをする豹牙の顔を睨む。本当こいつ、司にそっくりだよな。
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