「まぁ、なんだ。司さんが豹牙と小虎の二人を見て、俺の豹牙は色っぽいだとかなんだとか言いはじめてな……」
「クソだな」
「豹牙お前……まぁ、俺もこんな場所でなに言い出すんだって驚いたんだが、なぜか弟自慢をはじめた司さんに玲央が乗っちまってよ……」
そう、それ。それが信じられないのである。
あの玲央が弟自慢? いやいやいや、天地がひっくり返ったって絶対にありえない。
「……玲央、酔ってるとか?」
「いや、あいつザルどころかワクだぞ」
「わく?」
「あー、とんでもなく酒に強いっつーか、もう酒の無駄ってくらい酒豪っつーか」
素朴な疑問を投げかける俺に応える隆二さんは、やっぱりお兄ちゃんみたいである。
「でもあの歳で酒豪って……どうなんですかね、それ」
「まぁガキの頃から飲んでたしな、アイツ」
もはや弟談義をしている玲央と司さんは眼中になく、隆二さんとのんびり話をしていると、ふいに頭をくしゃくしゃ撫でられた。
振り向くと、そこには何故か悪戯気に笑う豹牙先輩の姿が。
「司も玲央くらいのときはワクだったぞ」
ニヤリ。なんとも素敵な黒い笑み。司さんの弟であることを認めざる得ない良い笑顔だ。
「そもそも初代総長だってこと、玲央は忘れてるみたいだけどな」
「え……と、そうですよね。そういえば司さんって、初代総長だったんですよね。仁さんより喧嘩強いんですか?」
「あぁ。しかもえぐいとこばっか狙ってくるから、司の喧嘩は見ててグロい」
「え、それは見たくないです」
「でもまぁ、司って喧嘩よりパソコンのほうが得意だったしな」
「あ、そうですよね。俺、パソコン苦手だから尊敬します。ネサフでレシピ探すんですけど、いっつも変なとこ押しちゃって」
「……今度、教えてやろうか?」
「え!?」
豹牙先輩の申し出にパァッと花が咲いてしまった。いかんいかん、つい嬉しくて。
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