それはデスリカにお粥をデリバリーしに来た俺が、つい豹牙先輩と立ち話をしたことによりはじまった。
と、言っても俺と豹牙先輩はただ話をしていただけで、珍しくオーナー自らお酒を運ぶ司さんがいなければ、こんなことにはならなかったのだろう。
「豹牙はさぁ、バイク好きが高じてプロ並みの整備できるわけ」
「はっ、だからどうした。こっちは料理で客掴んでんだよ」
「はい〜? うちの豹牙だって料理させりゃ客くらいいくらでも掴めるっつーの。てかカクテル一つ作れないお子様と一緒にしないでくれる?」
「作れない? 作ってねぇだけだろうがよ。抜かせ」
デスリカ螺旋階段の上、ブラックマリアの不良たちと、それにくっつく可愛い&綺麗系女子もいる中、司さんと玲央がアホな話題を展開している。
俺はそんな二人に若干引きながら、両隣にいる豹牙先輩と隆二さんに声をかけた。
「なんでこんなことになってるんですか? てかあれ、なんですか?」
「うーん……簡単な話なんだが難しいっつーか……」
「いいか小虎、あれはただの馬鹿だ。構わなくていい」
俺の質問に隆二さんが苦笑する。それに反して豹牙先輩はドン引きしながら冷えた目線を例の二人に向けていた。
「おい豹牙……お前、馬鹿って」
「いや、だってそうだろ」
一応恋人でもある兄に向ける視線ではないそれを、豹牙先輩は司さんへと惜しみなく送っている。
なんだかちょっと司さんを可哀想だと思う反面、俺は玲央があそこまで熱くなる理由がどうしても分からなかった。
なにせ信じられないことに、あの二人の話題は弟≠ネのだ。
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