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その背中を追うように体が前へ進んでいけば、今度は煙草を吸う豹牙先輩に腕を掴まれた。
若干睨むように彼を見れば、動じない双眸が見つめ返してくる。悔しさに下唇を噛みしめて、兄貴たちに目を向けた。


「てめぇの獲物なんだろ?」

「冗談、俺の獲物はアンタだよ」


笑った志狼が兄貴の足元にいる不良の顔を蹴り飛ばす。
血が舞って、地面がまた赤く染まった。痛々しい光景に吐き気を催せば、脂汗がポタリと地面に落下した。
俯いた顔を無理に上げる。目を逸らしてはいけない、そう思った。

顔を上げたそこには、気絶した不良を隅に投げ飛ばす志狼と、なにを考えているのか分からない兄貴が俺を、見ていた。
視線が交じり合って固まる。ただじっと、兄貴は俺を見ている。無表情といえば間違いない、けど、なにかがある。
逸らそうと思えばいつでもできた。でも、今はそれができない。したくない。どんな気持ちで兄貴を見ているのか自分でも分からない。それでも今は、この視線を逸らしては負けだと思った。


「小虎、あれがお前の兄貴なんだよ」

「えっ……?」


しかし突然、豹牙先輩が呟いた。そちらに気が向いて視線を外す。慌てて戻した頃にはもう、兄貴はまた知らない不良を殴り飛ばしていた。


「怖いか? けどあれがブラックマリア総長、朝日向玲央の姿だ」

「……」

「家にいるときとはどう違う? あんな玲央、知ってるか?」

「……違う、けど……知らない、ですけど……」

「なら覚えとけ、今から知ってやれ。あれがお前の兄貴なんだよ」

「……っ」


――ゴキンッ、ゴキンッ! 誰かの骨が折れる。目を伏せたくなるような惨劇が、そこにはただあった。
豹牙先輩の言葉に拳を握ってもその手は空で、俺はどうにかすることも、そもそもどうにかすべき資格すら持っていない。




 


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