だって、おかしいだろ。仲間同士で喧嘩なんて……そりゃ仲間でも喧嘩はするだろう、でもそれは親しい故の喧嘩で、俺と雄樹がするようなもので……でも今、目の前に広がるこれは、違う。
ふと気づけば兄貴も隆二さんも嬉々としながら不良たちを殴り飛ばしていた。
その光景に思わず体が前のめりになると、隣にいる志狼が俺の腕を掴んで阻止をする。
「小虎、これはブラックマリアの問題だよ」
「……だから、邪魔するなって?」
「うん、分かってるじゃん」
「……」
頭が痛い。こんな暴力にまみれた行為の一体なにが楽しいと言うのだ。
人を傷つけ怪我を負わせ、そのくせ嬉々と殴るその心情の少しも分からない。分かりたく、ない。
「やめっ、止めてくれっ!」
「うっせぇよ、こんな怪我したくらいで泣いてんじゃねぇぞクソが。んな根性で不良やってんじゃねぇよ」
ハッとして顔を上げる。左目に痣を作った男が必死に逃げているが、その片足を踏んで笑う兄貴がそこにはいた。
ふと志狼を見れば、どこか真剣な面持ちでそれを見ている。視線に気づいたのか、兄貴がこちらを見てその口角をつり上げた。
「銀狼、てめぇも来いよ」
「……」
兄貴の発言にとっさに伸びた腕が志狼の短ランの裾を握った。
気づいた志狼が目だけをこちらに向ける。冷たい、目だった。
「……小虎、勘違いしてるようだけど俺は不良だ。ここにいる連中も、みんな不良だ」
「だから、なんだっていうんだよ……っ」
「好きで喧嘩してるって意味だよ」
はっきりと言われ、体の力が抜けていく。志狼はそんな俺の頭をくしゃりと撫でると、片腕が外れているというのに乱闘のほうへ足を進めた。
途中飛びかかってくる不良をやすやすと足だけで気絶させ、兄貴のもとへたどり着く。
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