×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

9 - 6



それからお粥を食べ終えた志狼は仁さんともカクテルやバイクの話で打ち解けて、声をかけてきた女の子にも優しく接していた。
知れば知るほど同い年とは思えないが、鼻につかず、これ見よがしでもなければ気取らない。俺はそんな志狼に惹かれていた。

同い年ではあるが、どこか憧れる一面を持つ新たな人間と触れ合えることが、きっと嬉しいのだろう。


「いらっしゃ……おいおい」


来客を知らせるエレベーターの開閉の音がする。
仁さんがすぐさま挨拶をするが、そちらに目を向けた瞬間、その顔がヒクッと歪んだ。
つられて見てみれば、どこぞの誰かさんのように返り血で赤く染まった――兄貴がいた。

いつもは綺麗な金の髪にさえ飛び散った赤い血が、今は捕食を終えた獰猛な獣に見せている。
背筋に冷や汗が浮かぶ。俺は慌ててスタッフルームに駆け込んで、白いタオルを手にして戻った。

カウンターのほうに顔を出した瞬間、目前に広がったのは志狼の胸倉を掴む兄貴の姿だった。


「銀狼ってのはてめぇだな」

「そうだけど、それがなに?」


冷え切った空気が兄貴から放たれる。ふと見れば、隆二さんと他数人の不良たちも志狼を殺意の篭る眼差しで見つめていた。
しかし志狼は平然と、むしろどこか楽しそうに口角を上げている。


「俺に用があるなら直接会いに来い、下手な小細工してんじゃねぇよ」

「小細工? 冗談。狙った獲物は確実にしとめる。アンタも一緒だろ?」

「はっ、それこそ冗談だな。俺は――」


瞬きをした、本当に一瞬だった。瞬きをしたその直後、視界にあったのは志狼が殴り飛ばされたあとだったのである。
平然とその場に立つ兄貴は牙を向きだしにしたまま、威嚇ではなく武力の誇示を真っ向と見せつけた。


「小物は一発でしとめんだよ」

「――はっ、……クソが」


それでも志狼は怯まず、口から垂れる血を手の甲で拭う。すかさず仁さんが手を叩けば、一瞬揺れ動いた空気が破ける音がした。


「外でやれ、ガキども」


誰もが予想できたその声に、兄貴と志狼の顔が不服そうに歪む。




 


しおりを挟む / 戻る