ビリビリビリビリ
引っ張られるがままに着いていくと、そこは有名なホテルだった。
パーティをやっているらしく、警備の魔導師や人でごった返している。
そんな人混みを横目に、私達は関係者しか入れないような特別な部屋に案内された。
その頃にはもうラクサスの手は離れていた。
「お待ちしておりました。フェアリーテイル、ですね?」
「……おう」
「お二人には我が主の護衛をお願いしたいのです」
「護衛……」
ほんとに護衛だったんだ。
「とは言っても、側近が主を護衛しております。お二人は自由に会場を歩いて、主を見ている怪しい者がいないか……間接的に護衛をしてほしいのです」
ラクサスより丁寧な説明ありがたい。
けど、こんな依頼を受けるようなラクサスではない。報酬が余程良いのか、ここのホテルに来たかったのか……謎だらけだ。
「早速ですが、お二人には着替えて頂きます」
パチン。
彼が指を鳴らしら瞬間、どこからかメイドの装いをした女の人二人と、執事の装いをした男の人二人が私とラクサスを囲って──別の部屋へ文字の如く運んで行った。
「おわあ……」
運ばれた先は衣装室で、色とりどりの煌びやかなドレスが並んでいた。
惜しみなくレースと宝石を散りばめた、豪奢なドレスの数々。
素人目でも分かるほど、高いドレスだな、と思う。
「好みはございますか?」
おっとりとした声のメイドが聞いてくる。
ドレスとは無縁なこの人生。ドレスの好みなんて考えたこともない。
……ああ、ただ一つ言えるのは
「露出は少なめがいいなぁ……」
「何故ですか?」
凛とした声のメイドが聞いてくる。
何故って、そんなん決まってる。
「スタイルに自信が……無いから」
鍛錬の賜物である筋肉と、……ラクサスの言う通り、少し出てきたお肉。
くびれやバスト、ヒップ……などなど。言い出せばキリがない。
しかし凛とした声のメイドは言う。
「そんなことありません。しなやかで、引き締まっていて、強調されるところはされていて……とても魅力的で、健康的な身体です」
惚れそう。
「あ、ありがとう……ございます……。えっと、じゃあ……特にないので、おすすめで……」
「「かしこまりました」」
にっこりと微笑むメイド二人。
……なんだかミラちゃんに似てるなぁ。
[*prev] | [next#]