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それぞれのイノチ


嫌な感じが常に全身に伝わってきて、一瞬でも気を抜くと何かに取り付かれそうな…ここ、ワイリーキャッスル。
幾多のロボット達と戦っては進み、遂に到着した。
この事態の根源の場。
タイムラグもなく予定通りだ。
天井にあった扉を飛んでくぐると、いくつかの色のついた光がある部屋にたどり着いた。
その一つの光へとボクは入る。
先にいたのは、現在研究所にいるはずのロボットの姿。
目を疑った、あれは――アイス。

「お前がタイムマンか?」

アイス…いや、似ているが違う。
おそらくワイリーが作ったコピーだろう。

「……コピーか」
「ああ、そうだよ?…もしかして本物だと思ったのか?」
「…………」

一瞬でもそう思ったことは否定しない。
ボクは無言でコピーアイスを見る。
喋らなければまさに本物そっくりのそいつは、声を出した。

「あははっ、やっぱり思ったんだ?」

挑発。
コピーのやり方だろうか。
ボクはコピーを指差し、攻撃の準備を開始する。

「……ムダな時間は使いたくない」

そう言って、長針と短針を同時に発射した。
コピーはそれをジャンプで交わす。
応じたのか、コピーも攻撃を開始してきた。

アイス…本物のあいつとほとんど同じ動きをしてくるコピー。
一度経験がある、対して辛くはなかった。

このまま行けば勝てる。
そう、思った瞬間だった。

「痛いであります…タイム様…っ!」
「……っ!?」

突如聴覚機能が聞き取ったその声。
分かっていた、コピーの声だと言う事は。
……けど、ボクは攻撃の手を止めてしまっていて。

気付いた時には、遅かった。

「……っ!」

コピーの攻撃の衝撃で、全身に冷たい感覚と痛みが走る。
ボクは一瞬怯みながらも体勢を立て直し、再び攻撃を開始しようとコピーを見る。

「タイム様…わたくしはアイスマンでありますよ?わたくしに…攻撃をするのでありますか…?」

コピーが笑いながらこっちへと歩いてくる。
分かってる、コピーだ。
こいつはコピーなんだ。

あいつは研究所にいる。
あいつは…アイスは今研究所で博士に修理してもらっているんだ。
分かっていながら……ボクは躊躇ってるのか?

「……タイムマン、これで終わりだ!」

コピーの声が響き渡った。
攻撃がボクの前へと迫ってくる。

「……タイムスロー!」

チャージしていた力を解き放ち、ボクは時の流れを遅くしてコピーの攻撃を交わし、コピーの後ろへと回り込んだ。
ゆっくりと振り向いたコピーの表情は驚いていて。
ボクは騙されないと言わんばかりに力を込めて攻撃を放った。

コピーが声を出して仰向けに横たわる。
ぐったりとしたコピーにボクは歩み寄った。
無論、警戒しながら。

「……っ……アイスマンに攻撃…するなんて…」
「……アイスマンは一人しかいない。オマエはコピーだ」
「……そうだよ…所詮コピーさ…。時間稼ぎくらいしか出来ない…出来損ないのな…」

それだけ言って、コピーは大破した。
散らばるコピーの部品のかけら。
ボクはそれを一時の間見つめていた。
何か得体の知れない感覚が襲って来たが、それがなんなのかはわからない。
怒り?それとも…悲しみか?

「……アイスは一人しかいない。……でもお前も一体のロボットだったんじゃないのか」

口をついて出た言葉がそれだった。
これ以上深く考えるとボク自身が壊れそうな気がして。
ボクは考えるのをやめ、コピーのいた部屋を後にするのだった。

***

コピーとして生まれ、戦う事を命令されたからコピーなりにワイリーのために頑張った。
でも本当は、コピーだとわかっていても自分として生きたかったんじゃないか…という想像でした。
2013/2/2
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