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時の少年


それは、まだ暖かい季節の事であります。
月が綺麗な丸い形をしていて、星がいつもよりもたくさん輝いて見えた夜の事でありました。

わたくし…アイスは、中々眠れなくて、窓から夜空を見ていたのであります。
外に行こう、あまり遠くに行くわけには行きませんが、そう思って部屋から出たのであります。
廊下を歩いていると、一室から明かりが漏れているのが見えました。
一室…それは、博士様がお仕事をする部屋でありました。
お仕事が終わっていないのなら手伝おう、わたくしはそう思って扉をトントンとノックしました。

「誰じゃ?」
「わたくし…アイスであります」

入っておいで、優しい声で博士様がそう言ったのを確認すると、わたくしは部屋へと足を踏み入れたのであります。
部屋には博士様が一人、椅子に座り、机に向かっていたのでありました。

「アイス、どうしたのじゃ?」
「何だか眠れないので、外に星を見に行こうとしたのでありますが…」

明かりが見えて、お仕事が終わっていないのなら手伝おうと来たのであります、わたくしはそう続けました。
博士様は微笑み、ありがとうと言いながらわたくしの頭にポン、と優しく手を置いたのでありました。
そうした後これを見ておくれ、と言われて。
博士様が見る方向をわたくしは見ました。

「博士様…この方はもしかして…」
「新しい家族じゃよ」

細長い半円状の形をしたカプセル、その中には一体のロボットの姿がありました。
恐らくわたくしよりも少し高くなる背、まだ内面のパーツ部分のみで外見が整っていないのでありますが、それが新しい家族様である事はすぐにわかったのでありました。

「完成したら紹介するつもりでおったのじゃがの」
「もしかしてお邪魔してしまったでありますか…?」

不安を感じ、わたくしは博士様にそう問いましたが、博士様は再び微笑んでそんなわけはなかろう、とおっしゃったのであります。
よかったであります、わたくしはそう言うと、もう一度カプセルの中にいる新しい家族様を見つめました。
この方はどんな方になるのか、どんな姿になるのか、様々な思いを馳せながら。

「博士様、何かお手伝い出来ることはあるでありますか?」
「ありがとう、その気持ちだけで十分じゃよ」

明日も仕事じゃろう、博士様はそう言ってわたくしの肩に手を乗せ微笑んでくれました。

「博士様がそうおっしゃるのであれば… 」

その日はそう言って部屋へと戻り、やがて夢の世界へと旅だったのであります。
けれど、やっぱりわたくしは博士様とあの方が気になってしまって。
次の日の夜、同じように明かりが漏れた部屋へとわたくしは向かいました。
博士様は驚かれましたが、わたくしは博士様のお手伝いをさせていただける事になったのでありました。

「博士様、それは…」

何日か経った日の事であります。
わたくしの目に映ったのは、以前わたくしに使われていた内部パーツでありました。
以前わたくしは他の方に比べて電気に弱く、軽い電力だけでもショートしてしまうという経験がありました。
博士様が研究を重ねた結果、内部パーツを変えれば電気に耐性がつく、けれども大きな衝撃…例えば爆風などの衝撃には弱くなってしまうと博士様はおっしゃいました。
わたくしが仕事をする場所では、衝撃に気を付けなければいけないことは無いので、内部パーツを付け替えることにしたのであります。結果、今では電気にも耐えられるようになったのでありました。
博士様がおっしゃいました。
電力には弱くなってしまうけれど、そのパーツがその方には適切なのだと。

「手伝っておくれ、アイス」
「はい、であります」

その方は、例えるなら時計のような外見になりました。
頭にはベルがついていて、全体的に紫色の色合いであります。
体には時計そのものが付いていて、腕には黄色いリングが付いているのでありました。

“時間旅行を実現させたいと思ってな”

その方は、時を操ることが出来る方だと博士様はおっしゃいました。
過去や未来にも行ける事が出来るようになる、と。
けれど博士様でも難しいことはあるみたいで…。
時を自由自在に操る、ましてや過去や未来に行くこと、それは今すぐには無理だとおっしゃいました。
けれどその後、博士様がおっしゃったのであります。

“この子は、時と共に成長していく子じゃよ”

その言葉に、わたくしは強い想いを感じたのであります。
必ず完成させる、実現させたいと願う博士様の強い意思を。

その方がこの世界へと目覚めたその日は、初めて出会ったあの日と同じように月が綺麗な丸い形をしていて、たくさんの星が綺麗に輝いた日でありました。
博士様が皆様に居間に集まるようにと。
皆様は言われた通り、居間にそろって待っていたのであります。
扉が開かれ、博士様とその方が部屋へと入ってきたのでありました。

「みんな、新しい家族を紹介するよ」

***

アイスとタイムは、時代が違うけれど弱点が一緒だって思ったら浮かんたお話です。
こんな感じでライト博士のお手伝いをしてたらいいなぁと…´`*
2013/12/4
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