王様げーむ (4/4)




「「「「王様だ〜れだ!」」」」


皆で声を揃えて言った掛け声。このゲームの、お決まりの台詞。
それに応えたのは……。



「はいっ!くーが王様!」
草野が元気よく手を挙げた。
王様を引き当ててとても嬉しそうだ。



「1番が2番に、あーんするも!」

少しの間考え込んだあと、にこにこしながらお題を言う。


「あ、僕2番」

「くーちゃん、俺1番だよ」


軽く上げ、意志表示をする焔。それと。

草野に向かって微笑んで言うのが皆人。




二人はほぼ同時に言葉を発して。

げっ、と声を漏らす焔に、青ざめる皆人。



そんな、二人の間を漂う気まずい沈黙。
それを破ったのは焔の方で。


「佐橋、さっさとやりなよ?」


言葉の調子こそ普段通りだが握りしめている割り箸には小さな火が灯っていて、先端から徐々に灰となってきている。相当動揺しているようだ。



「あとでお兄ちゃんにはくーがあーんしてあげるも!」

「はは……ありがとくーちゃん」
とても微笑ましい。


だが。目の前の焔への対応に困る。


どうすべきか分からない皆人は箸を手に戸惑う。
箸を持つ手は皆人の心情を表すように震えている。



「あのー……かがりさん……」


意を決してそーっと箸を焔の口元に運ぶ。
焔は、差し出されたおかずを無言で食べる。




「これでいいよね」


目の前の皆人を飛び越えて草野に一言断りを入れ。



「ねぇ美哉、味付けかえた?」

そして、皆人の存在は考えないことにしたらしく向こう側に座っている美哉へ言葉を放っている。




「かがりた〜ん 好き嫌いせずに食べるですよ〜」


そんな焔の肩を後ろからがしっと掴む松の手。
何かと後ろを振り向いた焔は箸の先にあるものを見て緑色の野菜をみて身を強ばらせる。


「いや、それ僕嫌いっ……」

「いいから食べるです!」

有無を言わさずその野菜――ほうれん草を焔の口に押し込む。

「松!よくぞやった!」

「好き嫌いはよくないわよ?」

「皆人さんに食べさせてもらってずるいです……」

むーっと口を尖らせイライラを抑えきれていない結。



「お兄ちゃんも。あーん」

「う、うん。くーちゃん」


他のセキレイに集中攻撃されている焔を哀れに思いながら草野がくれたおかずを食べる皆人であった。


(2010.07.11-2010.12.31 拍手お礼文)







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