人前だって、お構いなし




「な、なんとか間に合った……」


「はい。お疲れ様です皆人さん」


最終的に皆人は結に引きずられる形で体育館に到着したのだった。
走っていた時以上に息を切らしている。
隣の結はけろっとしているが。

無事、時間には間に合ったようだ。



今は入学式の最中で。


理事長―――御中広人。
全身白でまとめ白衣を着ている様はまるでどこかの科学者のようだが、彼は理事長。
裏では何か怪しげな実験をしているとの噂もあるが理事長。

「諸君、入学おめでとう!思う存分青春してくれたまえ!恋愛に勉強……様々なものが君たちを待っている。精々頑張って私を楽しませてくれたまえ!」

と、はげましているのか何がしたいのかよく分からない挨拶であった。




続いて生徒会長の話があった。が、その内容も内容で。
生徒会長曰く、

「理事長は見ての通りの変人です。出来るだけ近づかないように気をつけて、学園生活を楽しんで下さいね。」

との事だ。




「美哉君、それはひどいじゃないか」

御中の言葉に生徒会長――浅間美哉は一瞥もくれず、体育館を後にした。


(生徒会長の信用を得ていない理事長って一体……。)
(この学校はどうなっているんだ……)
そう思わずにはいられない新入生一同だった。


そんな一連の儀式ばったことも終わり、今はクラス発表。
1年生のクラス分けが貼り出されている。

各々自分のクラスを探してあちらこちらに散っている。


そんな人ごみの中、情けない声を上げながら、ぱたぱたと足音を立てる女子生徒が一人。

キョロキョロと辺りを見回して誰かを探しているようだ。


「ハルカさまぁ〜どこですか?ハルカさま〜」



「……久能?」

久能、と呼ばれた女子生徒は探し人を見つけたようで、その面がぱあっと明るくなる。

「そこで待ってろって言っただろ。ほら、一緒のクラスだった」

ちょっと離れただけで心配すんなよとぶっきらぼうに言う。
そして、もう離れないようにと手をぎゅっと握った。

「はいっ」

握られた手を見て、更に嬉しそうだ。

「……お前さ、なんで俺に様付けすんの?恥ずかしいんだけど……」


「ふぇ〜……ごめんなさい、ハルカさま……じゃなくて……えっと……ハルカ……くん……ですか……?」

もじもじと頬を赤らめながら言う久能。


「うん。そう」

「無理です……ハルカさまはハルカさまですぅ」

「なんでそこで恥ずかしがるんだよ!」

俺まで恥ずかしい、とムキになる。


「すみません〜……」
怒られて、しゅんとなった久能はぐすりと鼻をすする。

「ほら、こんな所で泣くなって!目立ってるだろ」


むしろ声を荒げているハルカの所為で注目を集めている。
それが余計に久能を泣かせる要因となり……。

「びええ〜……!」

「わ、わかった、もういいから泣くなよっ」







「結ちゃん……あの人達何だろうね……?」

そんなやり取りを遠巻きに見ていた皆人と結。

そうやって見ているのは彼らだけでない。道行く人の注目の的である。



「すごく仲良しさんですね」

ニッコリ笑って言う。楽しそうな二人の姿を見てか、彼女自身も幸せそうだ。



「あらぁ、そういう貴方達も仲が良いじゃない?」


いきなり話に割り込んできたのは、制服に身を包んだ艶やかな黒髪を持つ女生徒。

制服の胸元を大きく開けており、胸が露わになっている。が、それでも大きな胸は収まりきらずに窮屈そうだ。



「へっ、あの……誰ですか!?」

初対面の相手にいきなり声をかけられ慌てる皆人。



「はいっ!皆人さんとは幼馴染ですから!」

が、こちらは全く動じていない。




「三年の風花よ。よろしくね」

と皆人に向かって軽くウインクした。


「はぁ……佐橋皆人です」


「結です!よろしくお願いします!」



自己紹介タイム終了。とばかりに風花がぱんっと手を叩いた。


「さぁ、あの子たちにちょっかい出しに行くわよぉ」






人前だって、お構いなし


(俺たちもですか?!)

(もちろん。ノリ悪いわねぇ……)








(2009.08.14)


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