28 《magcian side》
(夏ってこんなに暑かったっけ。)
今日の公演が盛り上がったのが、思ったよりも楽しかった。あたしはあの黒装束で元気に躍り回っただけだけど、温かい拍手はかく汗を爽やかにした。そんなこと、初めてだった。
夜、あたしはいつもの公園に向かった。練習する気力なんて微塵もなかったけど、ここにいると、自分の努力を真っ直ぐに感じることができる。それが今のあたしにとっては休息になる。あたしはやるべきことをやり遂げたんだ。それだけで心が満たされた。自然と鼻歌は[魔法使い]のテーマソングを歌い出す。
「や、元気そうだね」
「……真木さん!」
この前と同じカメラポーチを下げて現れたのは、あたしにアドバイスと力をくれた人。そして、あたしの[魔法使い]さん。
「今日だったんだろ、文化祭。うまく踊れてたじゃない。君が一番上手かった」
「え、来てたなら言ってくださいよね。……写真、撮りました?」
「ああもう、バッチリ。……見たい?」
真木さんは手慣れた操作で撮った写真のデータを見せてくれた。
[シンデレラ]をいじめる[継母]と[姉]たち。躍り回る[魔法使い]たち。[シンデレラ]に一目惚れする[王子]。[王子]の思いに激怒する[王様]。[王子]を慰める、心優しい[執事]。[シンデレラ]の気持ちを後押しする[シンデレラ父]……。
正直な感想を言うと、
「真木さん、写真上手だね」
「……一応アマ写真家なんだけど」
本当に、素敵な写真。みんなの笑顔がイキイキと眩しく輝いていた。
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