十二月八日
 図書室に登校すると、サガさんは、しんみりと語りだした。
「ユキヤくん、短い間だったけど、本当にありがとう。感謝してるよ」
「こっちこそ……この前はひどいこと言っちゃたのに……ごめんなさい」
「大丈夫、気にしてないからさ。最後は明るく別れようよ」
「はい……あの、手紙出したいんですけど」
「ああ、今度引っ越すからさ、僕のほうから送るから、ユキヤくんの住所、教えてよ」
 僕は迷わず住所を教えた。サガさんとの関係を、絶やしたくなかった。
 こういう時の時間の流れというのは早いもので、あっというまに昼休み直前になってしまった。
「ユキヤくん、元気でな」
「サガさんも、お元気で」
「そうだ、ユキヤくんにひとつ、いいこと教えてあげるよ」
「なんですか?」
「たとえ相手が教師であっても、おかしなことには、おかしいと、精一杯声を上げろ。今のユキヤくんなら、きっと立ち向かえる。ひとりでも、大丈夫。それから、時には相手をゆるすこと。これも大切だ」
「……わかりました」
「じゃあな」
 サガさんとは、校門で別れた。本当にいい人に出会えた。心から、そう思った。
 森で経験した、出会いと別れ。あまりにも短く、長い、幸福な時間。
 その日の夜は、めったに雪の降ることのない僕の住む町で、雪が降った。積もってしまうほど、たくさん降った。まるで、僕とサガさんの別れを惜しむかのように。
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テーマ「人外ファンタジー」
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