十二月八日
 翌日、十二月八日、月曜日。サガさんにサポート校への進学を報告した。
「決まってよかった」
 サガさんは、安堵の表情を見せた。けれど、すぐに真剣な表情に戻る。
「ユキヤくんの進路が決まってすぐに伝えるのは、つらいんだけど、大事な話があるんだ」
「大事な話ですか、なんですか?」
 神妙な面持ちで、サガさんは口を開いた。
「ユキヤくんにはすごく悪いんだけど……二学期いっぱいでこの学校を去ることになった」
 予想だにしない内容だった。ただただ、驚くしかなかった。
「ど、どうしてなんですか」
「急な話だったんだ。僕にも詳しいことはわからないけど……しかたがないんだ。最後まで味方でいるといったのに、ごめんな」
「……ひどいじゃないですか!」
 こんなことを言うつもりはなかった。けれど、口からこの言葉が出てしまった。本音――なのだろうか。
 そのあと、僕は一度もサガさんとしゃべらなかった。
 森が、急に暗くなる。僕はまた、森でひとりぼっち。またひとりでさまようことになる。出口が、遠のく気がした。



 あの日以来、一度も学校へ登校しないまま、二学期の終業式を迎えてしまった。両親は、事情を理解してくれたが、どうにか行ってくれないかと連日のように言う。
 会いたいけれど、会いたくないのだ、サガさんに。矛盾しているけれど、そう思うのだ。
 そんなことを、なんとなく考えていると、玄関の呼び鈴が鳴り響いた。午前九時を過ぎたころだった。両親はすでに仕事に出かけていて、家には、僕、ひとり。
 声はしない。ただ、呼び鈴だけが、鳴り響く。いつまでも、鳴り響く。あの電話の時のように。
 僕は、玄関へ向かい、おそるおそるドアを開けた。
「ユキヤくん……どうしても会いたかったんだ」
 予感は的中した。サガさんだった。
「サガさん……」
「行こう、図書室へ。最後のお別れは、図書室でしたいんだ」
 僕は、何も言わずに、靴を履いて立ち上がった。サガさんが、大きくうなずいた。
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