十月二日
 両親が帰ってくるまで、ひとりで考える。これからどうなるのか。いじめの事実を知ってもらえたことによる安心と、今後の予測がつかないという不安が、僕の頭の中で、入り混じっていた。
 これで僕はもう、大丈夫なのか? それとも、仕返しされるのか? 中学三年生の僕には、結論は見いだせない。
 森の出口にたどり着くのか、それともまだ、さまようのか。
 両親はその日、いつもより早く帰宅した。帰ってくるなり、僕の目の前にやってきて、頭を下げた。
「ユキヤ、気づいてやれなくて、ごめんな」
 そう言ったのは、父。
「ユキヤ、つらかったね、ごめんね」
 そう言ったのは、母。
「これで僕は、大丈夫かな?」
 大人である、父と母になら、わかるかもしれない。
「そうだな……大丈夫、だろ」
 そう言った父は、どこか、自信がなさそうだった。
 あまり良い気分にはなれなかった。両親を謝らせてしまったことに、ひどい罪悪感を覚えた。悔しいとか悲しいとかではなく、ただただ、申し訳なかった。
 両親は昔から、教育熱心だった。小学校入学の際には、親戚の反対もあり、小学校受験はしなかったものの、中学受験にはかなり気合が入っていた。
 僕のことを、大手の中学受験塾に通わせた。小学六年生の頃になると、毎日のように授業があり、勉強も夜遅くまでやっていた。ただ、僕の学力が低かったせいで私立の中学校には入れず、公立――正確には、県立の中高一貫校に入学したのだ。
 教育熱心な両親を悲しませてしまったようで、なんだか、とっても、やりきれない感情に襲われた。
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