11.不可解

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 そう、左良井さんがそれを求めたのだから僕はそれに従ったまで。彼女の求めることに僕が反対したところで、お互いが辛くなるだけだろう。
『それに、付き合うことは約束でも契約でもないでしょう。付き合うっていうのは、継続的な意思確認をするだけで繋がれる関係のことだと思いますから。それが一度でも切れれば、それはもう終わったことだと思っていいでしょうね』
 好かれることも嫌われることも、僕の出来る限りの範疇を超えた話だ。僕の意思などそっちのけで僕は勝手に好かれ、勝手に嫌われる。だから僕は僕のままでいる。ありのままの僕なら、好かれようが嫌われようが仕方ないから。
 ……それにしても少し、文章が長すぎたかもしれない。改行や空行をなるべく減らして、最後にこう付け足して送信する。
『どうです、幻滅させてしまいましたか?』
 今日は話しすぎかもしれない。いつもよりも夜が深まり、僕はもう目の疲れと眠気に身を委ねる気でいた。
 意識を完全に失う寸前に、僕の耳が携帯の震える音を聞いた。今日最後の彼女の返信だ。
『ううん……』
 やけに改行の多い返信だ。いちいちスクロールするのが面倒じゃないか。
『謙ちゃん、わたしね』
 内容よりもこの行間に込められているであろう何かを、僕は目を瞑って見ないふりをした。
『謙ちゃんのことが、余計好きになりそうだよ』
 僕は返す言葉を失って、そのまま眠りに落ちてしまったことにした。


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