10.二年生夏

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 楽しいことのあとに待っている空気が一番、楽しい時間を台無しにするんじゃないかと思うことはしばしばある。遊びの後の帰宅、祭りの後の片付け、デートの後のシャワー。始まる前は食べきれるかどうか心配だったほどの量のの肉を豪快に焼ききり食べきったバーベキューの後のゴミは普段よりも汚く見えたし、網や鉄板は焦げや油汚れを吸ってとても重かった。

 僕らの大学は海岸線沿いに立地しているので、少し歩けばすぐに浜辺にいける。若者がよく出向くせいかゴミやタバコの吸い殻が多少散在しているが、それさえ気にしなければ海は穏やかで浜辺は広く、どんなにはしゃいでも足りなくて、虚しいほどだ。ーーこれらは全て、僕が今日知ったこと。ここの海に行くのは初めてだった。

 参加したのは学科の半数くらい。最初に声をかけられたときは人数が足りないとのことで、それならばと誘いに乗ったわけだが、夏休みが近づくにつれて参加希望者が増え、結局20人の大宴会となったのだ。「人数が増えたなら僕は参加しないよ」とはもちろん言えない。それは、喜びは人数に比例するという大学生の合い言葉に背く行為だからだ。

 左良井さんはいなかった。

 左良井さんはこういう学科の集まりに積極的なタイプではない。去年の初夏の縦コンだって、先輩がいるから義理で参加したような感じだったし、そもそも左良井さんははしゃぐのが苦手なのだ。

『騒ぎわめいてる若者の顔を見るのも嫌。子どもっぽくて知性に欠けてて……隙のありすぎる顔。近づきたくもない』

 馬鹿馬鹿しいと思っていても、見ている分にはまだ愉快だと感じられる僕はだから、単純でお気楽なのかもしれない。


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