7.一年生冬

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 このアドレスを宛先に入力する日が来ると思わなかった。今日という日が来たのは、僕の中に残っていた"人間"らしい「罪悪感」のせいだった。

 壊れた人間関係を積極的に再構築したいと思うような気力なんて、大学に入る前から毛頭なかった。でも、自分がしでかした過ちをこれ以上放っておく事も出来なかった。僕は迷っていた。

『好きとか、正直よく分からないんだ
 でも左良井さんが僕にとって一番心を許せる特別な相手なのは本当だよ』

 薄っぺらい。僕の言葉は所詮、届かないちゃちな紙飛行機のようだ。

「……いいや、消そう」

 キャンセルボタンを押してポイとベッドの上に携帯を放り投げる。椅子の背もたれに大きく体重をあずけ、逆さまの窓を見た。窓の向こうの曇り空を見ながら、心を許すってどういうことだろうとふと思った。

 許す、と書くくらいなのだから、許可するとかそういう意味のゆるす≠ネのだろう。入場許可証みたいなのを僕がいちいち発行して、それを渡された人だけが入れる場所。
 その様を想像する。それはとても違和感のある光景だった。

 僕が許すんじゃないんだと思う。僕は赦され≠トいないから、許すことさえ出来ない。
 誰か、僕の心を赦して≠ヘくれないだろうか。

(ただの弱音だな……)

 なんてね、と一人で呟いて財布を手に部屋を出た。夕飯、何を食べよう。


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