13.仲良し三人組

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 パシャ。
 手に持っていたファイルでハセの頭を叩いた瞬間、打撃音とは違う音が生徒会室に響いた。
「……え?」
「なにこっち見てんの。被写体がカメラ意識しちゃ駄目でしょ」
「いやいやいや……あははは」
 これにはハセも僕も反論せざるを得ない。でもハセは反論しつつも一人で爆笑している。
 とりあえずそっちは放っておく。
「なに勝手に撮ってるの」
「素晴らしい被写体に出会ったらレンズを向けることは、写真部の二つ目の呼吸法よ」
「意味が分からないから日本語でどうぞ」
「やっぱりあたしの話聞いてないでしょ。……あと、私もなんか愛称で呼ばれたい。やっぱり二人に合わせてマナかなぁ」
 独り言を言ってる間にも彼女のテンションは留まるところを知らない様子だった。僕は思い切って席を立つ。
「今日はもう帰りなよ、僕たちまだ仕事あるし」
「えー、いいじゃん別に」
 ぶつくさと文句をぶつける彼女の背中を押して扉の前まで強引に連れ出す。
「ちぇ。ケンは真面目なんだねえ」
 早くも愛称で呼び始めた。まるでハセくらいの長い付き合いであるかのように。
「今度は仕事がないときに来て、ゆっくりすればいいだろ」
 彼女にそう言い残して、僕は扉を閉め切った。
「……僕よりマナさんとの相性が良さそうだね、ケンちゃん」
「変なこと言わないでよ。あと、気色悪い呼び方をするな」
「照れちゃって」
「仕事しろ」
 そうしてまた部活の会計報告書の処理を淡々とこなす。
(仕事がないときにゆっくり……)
 自分で言ったその言葉に瞳を輝かせたあの写真部の彼女の顔が、いつまでも頭に焼き付いて離れなかった。


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