その人、危険





「ほら、もっと近くにおいで。」
『ちょ…!』










その人、危険










ひょんなことから、私は潮崎君の家に泊まることになった。

…なってしまった。



1人暮らしに最適な広さの高級住宅マンション。
私がお酒を飲んで爆睡してる間に終電も過ぎた。
そんなときに泊めてくれるのはありがたいんだけど…



何か、身の危険を感じる。


あと、潮崎くんがいつもの潮崎くんじゃない。

ブラックだ。

ブラック潮崎だ。



「いやだなぁ、何もしないよ。」
『そう言う人に限ってナニかするんだよね…!?』
「ふふ、何を期待しているんだい?」
『何も期待してないっ!!』



違う。

私の知っている潮崎君はこんなのじゃぁない。


優しくて

格好良くて

笑顔が素敵で

すっごく上品で

A1級・賞金ランキング18位くらいの実力者。


けれど、そんなイメージ像は一瞬にして崩れ去っていった。





『ね、早く寝よう?もう2時だよ。』
「もうそんな時間か、そうだね、そろそろ寝よう。」
『ホッ…』
「こすもさんに、一緒に寝ようなんて言われたら断れないからね。」
『ストレートな意味でね!?




ってゆーか、一緒に、なんか言ってない!



「電気は消した方がイイのかな?」
『えぇッ、何!?』
「大丈夫、優しくするから。」
『わーーー!』



潮崎君はベッドに寝転がり、私の腕を引っ張った。


私はあっけなくベッドにダイブ・イン!!




シングルベッドで2人────ッ!?



思いっきり端っこの方に寄ると、エロ貴公子は私の方へ寄ってきた。



「ほら、もっと近くにおいで。」
『ちょ…!』



近くにおいで、じゃなくて、あんたが私の近くに寄ってんの!!



『近い、顔近い!』
「可愛いね、こすもさんは。思わず襲って食べてしまいそうだよ。」
『食べてしまいそう、じゃなくて、今まさにそうしようとしてるでしょぉ!?』





そもそも、どうして潮崎君は私を家に泊めようとしたのか。



あんまり接点無い…よね。
潮崎君は群馬支部で、私は東京支部だから、同期とはいえ、あまりレースでも一緒になったりしない。



本栖時代は同じA班だった。

その時はフツーに格好良かったよなぁ、潮崎君。
どこで人生のレールを脱線したんだろう。



「あれ、少し筋肉がついたね?本栖の時は抱きしめたら折れそうなくらい、か弱かったのに。」
『まぁ、レーサーだからねぇ…筋トレとか、するよ?』
「ふふ、可愛さは今も変わらないね。」
『そ、そぉ…?』
「今、ちょっと僕にときめいた?」
『べ、別に!』
「あの頃から僕は君に惹かれていたよ。」
『う、うん!?』



何このピロートーク!!!!



「そうそう。最近、スポーツ雑誌に写真がよく載るよね?」
『そうねー、最近調子良いから、よくインタビューとかのオファーがくるようになったかな。』
「2ヶ月ほど前は普通にレース後の写真。先月は私服でインタビューの写真。ということは…」
『うん?』
「今月当たりはそろそろ脱ぎ始めてしまうのかと踏んでいるよ。」
『脱がんわ!!確かに今月も雑誌のインタビューはあるけど、大丈夫、私服よ!』
「腑に落ちない!!」
『えぇッ!?』
「以前から思っていたが、君の私服は露出度が高い!」
『親父か!あんたは私の親父か!』



ふいに、潮崎君の腕が私を優しく包み込む。

え、何これー何この腕ー抱きしめられてる!?私すごい抱きしめられてる!?



あー…多分これ、離してくれないんだなぁ。


きゃぁ、捕まっちゃった☆


…なーんて言ってる場合じゃない!



「明日になったら早速、岡泉さんに自慢するよ。」
『何を!?』
「ナニをさ!」
『ド下ネタやないか!』
「大丈夫、さっきも言った通り、優しくするよ!」
『だ、だめ!だめ!』
「さっきから、まんざらでもない様子だよね!」
『も、もう嫌だーーー!』




私に朝は来るのだろうか―――





++ END ++




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