本当に大切だと思うなら





ーバカ!猛のバカチン!
ーね、私って猛の何ッ!?
ー”彼女”でしょ!?










本当に大切だと思うなら










『確かに、萩原先輩は強いし美人だけどッ!』
「わ、悪かった、俺が悪かった!謝る、だからそう怒るなよ…」
『ぐすっ。酷いよー、私って猛の何なのよ。』
「その…彼女、だよ。」
『分かってるくせに、何で…っ、もう知らないッ!!』
「あ!おい、待てよ!!」



ばるこは勢いよくドアを開け、浜岡の部屋を出ていってしまった。



「…やばい。めちゃくちゃ怒ってんな…」





本栖リーグ、第2節の優勝戦。
3日間、研修生達のコーチをしたプロの選手達は、そのレースを見ていた。
そこで、浜岡と萩原は夕ご飯を賭けをしたのだ。
この優勝戦、浜岡は波多野が1着、萩原は青島が1着だと予想し、予想が当たれば相手に夕ご飯を奢ってもらえる。
賭けに負けた浜岡は、萩原に夕ご飯を奢ることになった。



それを江上から聞いたばるこは激怒。
そして喧嘩――ばるこが一方的に怒っているだけだが――が始まったのだ。





バンッ


「も、戻ってきたのか、ばるこ!」



ホッ、と浜岡が胸を撫で下ろしたのもつかの間。



『言い忘れたことがあっただけよ!私だって、美形狙いで同期の潮崎君と夕食一緒に行ったり、期待の大型新人の洞口君辺りをたぶらかしてやるんだからッ!バカッ!』





バタンッ



「…んなことしたら、お前の身が危ねぇだろうが。チッ、これは…追うべき、だな。」



浜岡はすぐさま家を出て、ばるこを追っていった。



ご丁寧に、鍵を掛けるのを忘れずに。





「くっそ…あいつ、何処行きやがった…!?」


手当たり次第に探してみるのだが、見つからない。


ばるこの家に電話してみても留守。
携帯も、電源が切られていて繋がらない。



「本当に潮崎や洞口ん所に行ったんじゃねぇだろうなぁ…!?」





浜岡の脳内妄想―――


『潮崎君、このワイン美味しいねー!!』
「そう??ここ、僕のよく行く店の1つなんだ。」
『そっかー。ありがと、こんな素敵なバーに連れてきてくれて!!』
「フフッ。喜んでもらって嬉しいよ。そうだ、こすもさん・・・いや、ばるこ。」
『えっ、なぁに?』
「僕と付き合ってくれないか?良い店、他にも知ってるんだ。君と、2人っきりで行きたいな。」
『え、私で良い…の?』
「君が良いんだ!だから、少し早いけど、苗字をこすもから潮崎に変えないか??」
『はぁん!!潮崎君…いえ、俊也。…喜んで!!』






「(やばいな…さすがに洞口はまだ本栖を卒業してない上、未成年だからないにしても…ってそもそも何でばるこが洞口のことを知ってるんだ…?あいつ、あんまり競艇の新聞とか読まねぇのに……いや、それは置いといて、問題は潮崎だ。さすがに同期ってのがなぁ…)」



浜岡が道中でそんな事を考えているとき、ばるこは―――





『戻ってきたものの、どうしよう…鍵開いてないし…』



浜岡の家の前で、鍵のかかったドアにもたれかかる形で座っていた。


つまり、入れ違いになったのだ。



『やっぱ、猛怒ってるよなぁ…はぁ。ただ、私が勝手にヤキモチ妬いただけだし。何て謝ろう…ハッ!まさか、猛、潮崎君んとこに殴り込みに行ってるんじゃ!?…って、それはないか。ここから桐生、遠いもんね。…でも、ホント、どうしよう。』



その刹那。


「―――っ、ばるこ!!」
『!!… た、猛っ。』


ばるこの目の前に、汗をかき、肩で息をしている浜岡の姿が現れた。
ばるこは驚いて、バッと立ち上がる。



『なん、で…?』
「ったく、今まで何処行ってたんだよ!?」
『さ、探してくれてたの…?それも、走って…?』
「ったり前だろうが!!この夜中に1人で泣きながら出ていっちまうし、誰かに襲われたりしたらどうすんだ!!」
『ご、ゴメン。心配かけて、ゴメン…っ』
「いや、でも…俺も、悪かったよ。」



そう言って、浜岡はばるこを抱きしめて、頭を優しく撫でた。



『…すん。』
「泣きやんだか??」
『うん。』
「良かった。」
『うん?』
「ホントにお前が、ここから桐生まで遠い距離、潮崎に会いに行ったんじゃねーかとと思った。」
『まさか。んなワケないのに。…電話はしたけど。』
「電話したのかよ。」
『えへ…喧嘩したこと言ったら、ばるこさんはまだ浜岡さんが好きなんだろ?だったら謝らないとダメだよ、って。』
「そうか…あいつ意外と良い奴だな。」
『でも僕の所にならいつでもおいで、だって。』
「…前言撤回する。」
『やっだー、怒らないでよ。私、自分の意志でここまで戻ってきましたから。』
「るせー。お前は俺だけ見てろっての!!」
『ん。』



―私には、猛しかいないの、分かってるでしょ?





ばるこを抱きしめる浜岡の腕に、力がこもった。





++ END ++




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