「カントクこれ…どーゆーつもり?」

練習試合。スタメンが全員1年ということに、チーム皆驚いている。リコはため息をしながら答える。

「あいつがどーしてもね、一年生の試合も見たいって…あと名前も」
「鉄平!なんだよいったい?名前も!」
「ん〜?」
『んーと、』

私が返事をする前に小金井くんが話し出す。

「んーにゃオレわかったよ!この試合たぶん負けるでしょ?ねー、名前ちゃん!」
『うん』
「は?」
「最近、火神はプレイが自己中になってる。けどそれじゃ勝てない。だからわざと負けさせて一人が強いだけじゃ、勝てないことを教えるつもりっしょ?」

え、そうなの?

まだバスケ部に入って日が浅い私は火神くんのプレイを知らないので、てっきり、ただたんに1年生の実力を見たいからスタメン全員を1年にしたと思っていた。なるほどーと思いながら木吉くんを見る。

「なるほど!すげーなコガ」

…ん?

「あれっ!?えっ…いや、だってさ…」
「まあ…なくはないけど…アイツってさ…そーゆーの言われなきゃ気づかないほどバカなのかな?」
「えっ、うーん…」
『さぁ…?』

小金井くんと二人で頭にハテナを出しながら木吉くんの話を聞く。

「迷いや悩みは感じなかったけどなオレには…むしろ何かに気づいてほしいとしたら、カレの方だよ」と言い再び試合に目を向ける木吉くん。

目線の先には

『黒子くん…?』
「ああ」

木吉くんの目線を追うように、私も試合を見る。じっと黒子くんを見ると…確かに何かおかしいと思った。中学生時代の彼しか知らないから、変わってても同然なんだけど、何か違う。

………あの頃の私みたい。ふとそう思った。

ああ、彼はきっと…

『壁にぶつかってるんだ』
「何?名前ちゃん?」
『え?あ、ううん、なんでもないよ』

にしても、昨日は気づかなかったな…。まぁ昨日は、ほとんどリコと話ししてたからなー。木吉くんは、よく見てるんだね。凄いな、と感心しながらチラッと木吉くんを見ると目があった。不思議そうに首をかしげながら木吉くんを見る。

『?』
「ん?どうした名前」
『ううん』
「そっか」


◆目線の先
(名前の目線の先が少しだけ気になった)

20140529編集



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