禍ノ子
 天敵 / 椿


 おかしい。乳首なんてなんでもなかったのに、大志がいやらしくするから恥ずかしい。
 真っ赤な頬で顔を左右に振りながら、椿は必至で快感を逃していた。生理的な涙もにじんで、きっとひどい表情に違いない。
 そう、気持ちがいいのだ。パンツの中もびしょびしょに濡れてしまっている。
 酒に酔った大志は好きなように椿の乳首をいじっている。もはや抵抗の力もなくなってしまった椿は、自分の腕を口元に押し当てながら、必至で喘ぎを殺すことしかできない。

「あー、くそ、ちんこ痛え」

 雄くさい声で呟いた大志は、一旦椿の胸から顔を上げた。邪魔くさそうに自分のTシャツを脱ぎ、性急にジャージごとまとめて床に放っている。さっきからごりごり当たっていたからわかっていたけれど、ボクサーパンツを押し上げる男性器は完全に起立して、その先端には染みまでできている。むせ返るような雄の象徴から椿は目が離せなかった。ちょっと待って、何するつもりだ。そう聞きたくてももう舌の根が回らない。
 弛み切った椿のいやらしい顔を満足げに眺めた大志は、きつそうなボクサーパンツから自分の性器を解放した。ばちんっと音が鳴りそうなほど勢いよく跳ね返った刀身が、一度割れた腹筋に当たって先走りの糸を引く。まるで涎を垂らす裏筋がいやらしく光っていて、太い幹にはびくびく脈打つ血管が巻き付いていた。重たげな陰嚢がふたつぶらさがっていて、その中に溜められた精液の量を想像してしまう。
 固まる椿の半ズボンを下着ごと膝の辺りまで下ろした大志は、露わになった椿の恥部を舐め回すように眺めた。

「乳首気持ちよかったのか、糸ひくくらいべっちゃべちゃ」
「あっ、あ、やだ、見ないで」

 椿のそこはまだ慎ましい形でうすい皮に先まで包まれている。朝顔の蕾みたいなうぶな形なのに、許容範囲を超えた快楽に対応しきれず、泣きじゃくっているみたいに濡れている。

「あーあ、上手に剥けなくて苦しそうでかわいい」
「やだっ、さわ……っあぁ!」

 大きな手のひらでくちくち音を立てながらあやすみたいにされて、包まれた先端を親指がちゅるんと剥いてしまった。

「おー、こっちも素直……って、ちょっと出ちゃったな」

 気持ち良すぎて気づかなかったが、剥かれた瞬間少し射精してしまったらしい。大志の親指に白濁の飛沫がかかっている。けれど握りこまれているので、その先が続かない。
 ひくひく痙攣しながら、射精もうまくできなくて、泣きが入ってくる。中途半端に高められた快感が椿の身体中を暴れ回って、熱くて溶けそうで我慢できない。

「ひっく、う……大志、いじわるしないで」
「ん?」
「もっと……っ、ちゃんとしてっ」

 泣きながらお願いしたのは、もっとちゃんと擦って射精させてほしいという意味だ。
 けれど、どう受け取ったのか目を血走らせた大志は、雄茎から手を放すと、今度は椿の真っ白な両足を肩に担いだ。

「それってもっと進んでいいってことだよな」
「あっ、あ……?」
「ちっちゃくてかわいそうだけど、もう俺も我慢の限界」

 ぬる、と鉄の塊みたいな熱い質量が後ろに押しつけられた。えっ、なんで、前をしてくれないのと思うばかりで、椿はろくに抵抗もできない。あまりに知識がなさすぎて、これからされることをうまく判断できていないのだ。
 けれど、次の瞬間、ぐっとかけられた圧力とその粘膜の熱さに驚いて、そこで椿は初めて自分の身に起きている事を理解した。

「やっ、やあん! やだやだっやめて、おちんちん抜いてっ、大志」
「ちょっ、先入ってるからあんま暴れないで」

 椿の抵抗が大志を不用意に刺激したらしく、どぷっ、と熱い精液が秘部の内側にぶちまけられた。つうっと隙間から白濁の筋が落ちる。うそ、お尻の中に射精された。

「……っ、ちょっと出ちゃったじゃねーか、くそ、もう止めてやれねーからな」

 けれど、それがかえって潤滑剤になったらしい。大志はぬるぬると媚肉に精液を塗りつけながら、少しずつ奥に侵入してくる。お腹の中が大志でいっぱいだ。息が出来なくなるほど苦しくて熱い。

「やあっ、助けてっ、やっ、これなに」
「なにって、めちゃくちゃセックスしてるんだろうが、え、したことないの?」
「したことないっ、大志がはじめてっ、やだやだっ、抜いて! おっきくてお腹くるしい、奥まできてるからぁっ」
「え……なにそれ、天然なの……あーやべえ」

 熱い溜め息をついた大志は、泣きじゃくる椿を乱暴に抱き寄せると腰を揺さぶり始めた。その一瞬で椿の意識は半分飛んだ。内臓が全部持っていかれそうになる。弾むような喘ぎを止められない。椿を使って自慰をするみたいな大志の腰の動きがいやらしすぎる。
 視界も、感覚も、聴覚も、全部大志に犯される。

「あー、ここ、前立腺わかりやすくていいなあ、探さなくても亀頭に当たる」
「あ、あんっ、あっ、あッ、や……っあ」

 お腹側にしこりがあるようで、そこを亀頭が擦るたびに白湯を流したみたいに力が抜けてしまう。そのせいで、別に許していないのに大志の刀身が奥へ奥へと侵入してくる。ごちゅっ、ごちゅっと奇怪な音を立てるほど激しい動きに、椿は何かが我慢ができなくなる感覚に襲われた。射精とも尿意とも違う、けれどものすごく似た何か。

「あっ、ああ、やめて、やっ、出ちゃう」
「ん……ああ、はじめてのお尻でいっちゃうのか、エッチだな椿ちゃんは」
「違っ、ちがうのが出る」
「んー?」

 必死の訴えも、大志は聞く耳持たずでいやらしい腰の動きを止めてくれない。

「あっ、や、やぁっ、やら、見ないでッ、あ、あああ!」

 我慢など意味もなく、数回痙攣した椿は思い切り潮を噴き上げた。ぷしゃぁっと噴き上がる透明な飛沫は、大志の胸元まで勢いよく濡らす。

「やっ、あっあっ……」
「………………」

 自分の下で痙攣する椿の痴態に、大志は思わず動きを止めた。セックスの相手が潮を噴くところなんて始めて見た。その飛沫を浴びているうちに、とんでもない感情に飲まれていく。

「あっ、あっ……やっ、おしっこ……」
「あ、ああ……これはおしっこじゃなくて……なん、だ、これ、こんな……くそ……」

 そんなに気持ちよかったのか、こんなにつんとした美人が興味もなさそうだったのに、いや俺も別にそこまで興味はなかったのに、静かそうなのに気が強くてギャップがあって、いやらしい乳首して、放っておけなくて、はじめてのセックスでちんこ突っ込まれてんのに、奇跡みたいな相性の良さで潮まで噴いて、いやらしい乳首して、あーなんだこれ、あーなんだこれ、いやいやこれは、くそ………

 好きかもしれない。

「うっ……」

 何の脈絡もないのに納得せざるを得ない答えに辿り着いた大志は、そう自覚した途端、唐突に射精した。痙攣を繰り返す椿の最奥に、びゅっ、びゅううっと夥しい量の精液を流し込む。
 一方の椿はされるがままで、抵抗の力も残っていない。それどころか大志の前で失禁したと思い込む等様々なショックに耐え切れず、とうとう意識を手放した。


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