禍ノ子
 初恋 / 虎太


 咲人は畳んだ布団の影に手を伸ばすと、苺ジャムの瓶を手にした。しかしその中身は透明な粘着性の物体で満たされている。咲人はそれを掌に掬いとると、慣れたように自分の股ぐらに塗り込んだ。

「……ん、あ……虎太、見て」
「……おう」

 眼球が爆発しそうなほど熱い。何が「おう」だ。間抜けにも程がある。もっと気の効いた返事が出来なかったのか。しかし、虎太の思考は完全に停止していた。
 薄く笑った咲人は、それを虎太の陰茎にも塗り込むと、そのまま大きく足を開いて跨がった。自分の右手しか知らないそこに、咲人の濡れてひくつく蕾がむちゅっと吸い付く。

「あ、あ……」

 そのまま咲人が腰を落とせば、卑猥に拡がる孔はなめらかに虎太を飲み込んだ。入り口の辺りは強い締め付けを感じたが、その奥は熱い底なし沼のように蕩けている。

「ッ……う、く……」
「は……っ、コタ……気持ちい」

 わざと襞のある腸壁に擦り付けながら、刀身を根本まで押し込んだ咲人は、それを示すかのように柔らかな尻たぶで虎太の陰嚢を押し潰してみせた。
 ひくひくと軽い痙攣を繰り返しながら、片手を床につき、まるで見せつけるように白い腹を反らせる。自分の性器に穿たれたそこが、内側から盛り上がったりしないかと、虎太はバカみたいな不安に駆り立てられた。
 それほど二人は深く繋がっていた。虎太の亀頭は、確実に危ないと思われる場所をがくんと越え、咲人の粘膜と癒着している。

「……さ、咲人、こんな奥まで入れて平気なのか」
「あ、あぁん、ほんとは、こんなのだめ……っ」

 喘ぐように息をした咲人は、楔が抜けないように体重を支えると、緩慢に円を描くように腰を回した。縦横無尽に揺れる咲人の腰に、いろんなものがもっていかれる。

「あっ、あっ……童貞おちんちん、っんぁ」
「ど、童貞言うなッ」

 半分くらい挿入したまま抜き差しを繰り返したり、かと思えば深いところで腰を細かく揺すってみたりと、咲人の動きは予測が出来ない。手練れた玄人の腰使いに、つい数秒前まで童貞だった虎太の陰茎はあっという間に暴発した。

「くっ……、あ!」

 乱暴に咲人の腰を両腕で掴むと、そのまま力任せに自分のほうへ落として射精した。熱い飛沫を胎内に感じた咲人はびくびくと震えながらそれを受け止める。量も多く勢いのある放出が終わるまで優しく見守り、ちゃんと出しきれるように腰を揺すって手伝ってやった。

「こんなにいっぱい出して、虎太、気持ちよかっ、……あっ!?」
「も、もう一回」

 そのまま体制をひっくり返した虎太は、今度は自分が主導権を握るべく咲人を組み敷いた。

「はあ、はァ……っ、やべ、気持ちいい」
「あっ、待って、コタ、あっ、あ……!」

 結合部からぐちゅぐちゅと泡立った精子が溢れ、お互いの腹はその白濁にぬめって擦れた。

「あ、アッ痛い! コタ、そんなに奥は、痛い」
「咲人、咲人ッ、また出る」
「や……っ ひぁ」

 力加減も分からずにあっという間に二度目の精を放っても尚、「もう一回」と腰を揺すり始める。
 虎太に絶倫の可能性が浮上した咲人は、安易に誘った自分の行いを少しだけ後悔した。
 ほんの、少しだけだったが。


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