私は昔から大事なことほどよく失敗をする。
中学生の時、文化祭の劇で準主役の役を貰って練習では完璧だったのに本番で台詞が出なくなってしまった。
高校生の時、所属していたバレー部の大会がある日、階段から落っこちて試合に出られなかった。
大学受験の日、受験票を忘れてしまって試験が受けられなくなる寸前だった。
やっぱり私は大事なことほどよく失敗する。

「…どうしよう」

ぐるぐるそんな言葉だけが頭を巡って、結局いい案が思い浮かばずにただうなだれた。
私の頭のどこかが混乱している、落ち着けと訴えている。
だけどそれで冷静になれる筈がない。
そんなことで冷静になれるなら最初からこんな状態に陥ってはいないだろう。

「どうしよう」

もう一度呟いて頭を抱える。
でもどうしようどうしようと呟いても私がやってしまったことはもう消せない事実として残っているのだ。

「どうしよう」

もう八左ヱ門とは今まで通りではいられないかもしれない。
そんな泣きたくなりそうな事実に頭を抱えて机に突っ伏した。

竹谷八左ヱ門、私の親友。
そして私の、好きな人。
だけど自分の気持ちを言うつもりなんてかけらもなかった。
好きだなんて言ったらまず間違いなく振られるし、気まずくなるだろう。
そんな風になってしまうぐらいなら私は一生友達でいることを選ぶ。

…その、つもりだった。
それなのに急に好きという気持ちがどうしようもなく大きくなって、つい言ってしまったのだ。
こぼれ落ちたという表現がぴったりなそれに八左ヱ門はとても驚いていたけど、それ以上に私が驚いた。
なんでそうなってしまったのかまったく分からない。
だけど本当に無意識にぽろりとこぼれてしまったのだ。

「私、八左ヱ門のこと好きだなあ」
「へえー………え?」
「…あれ?」

今、私、なんて言った?
そう戸惑いながら確認するように八左ヱ門の顔を見たら八左ヱ門は驚いた顔のまま固まっていて、私はああ、やってしまったと自覚する。
言ってはいけないこと、言ってしまえば全て壊してしまうことだと分かっていたはずなのに。
一瞬で八左ヱ門との友情の崩壊を理解して頭が真っ白になる。
せめて、せめて、友達でいたかった、のに。

そんな私の気持ちがおもてに出ていたのかそれとも八左ヱ門がなかったことにしたかったのかそれは分からない。
だけどとにかく八左ヱ門はなんでもないみたいな表情を作って、からからと笑ってみせた。

「…お、お前、そういうたちの悪い冗談やめろよな。三郎辺りに入れ知恵されたのか?」
「えっ、あ、」
「まったく、そんなでも一応女なんだからちっと考えろよ。勘右衛門に言ったら本当に喰われるかもしれないぜ?」
「…あ、はは。うん、そうだね、八左ヱ門の動揺する姿を見て笑ってやろうと思ったんだけど、八左ヱ門ったら冷静なんだから」

ははは、と二人で笑ったあと、私たちはどことなくよそよそしい空気で過ごしてなにごともなかったかのように解散した。
そのあとからほっとしたような、そうでないような不思議な気分のまま、私は長い間コタツに入ってぼんやり座っている。
友達のままでいいと思っていたのは確かな事実だ。
なのに、なんだろうこの気持ちは。

「あー…どうしよう」

何回目か分からないどうしようを呟いて、ばたりとコタツに突っ伏して倒れる。
ひんやりした机の温度が気持ちいい。
じわじわと頬を冷やす机にしばらく身を任せて、それからよしっと気合い注入。

「こんな時は勘ちゃんに相談だ!」

と、いう訳でお隣さんの尾浜勘右衛門くん、我が家のうっすい壁をドンドンさせて頂きます!


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