青空と猫


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02.授業風景



午前は必修科目、英語等の普通の授業だ。
一限目は英語。授業開始のチャイムが鳴り、ドアから入室してくる担当教師。サングラスとトサカのように逆立った金髪が特徴的で「ボイスヒーロー」の肩書きを持つプロヒーロー、プレゼントマイクだ。個性はそのまま「ヴォイス」。凄まじい音量の声を発することができ、高低音も自由自在に操れるのだ。
饒舌で常にテンションが高く、個性を使用してないのにも関わらずうるさい。

ちなみに授業は普通の極み。生徒にも、勿論藍にもクソつまらないと思われている。


「おらエヴィバディヘンズアップ!!もっと盛り上がれーー!!!」


「…」


英語も大して得意ではない上に中途半端にテンションを上げさせようとするマイク先生の授業のつまらなさ。もう既に兄、相澤先生の忠告を破りそうになっていた。その証拠に思わず欠伸が漏れる。


「おっと!イレイザーシスター!?まだ一限目だぜ!!sleepyかもしれねぇが頑張れよ!!」


「はっ…?!はい!起きてます!」


「Yeah!!気を取り直して次ッ!!」


まさかイレイザーシスターなんて言われるとは、名指しされたのも同然で、思わず大声で返事をしてしまう。後ろ側にいるクラスメイトからは小さな笑声が聞こえた。かなり恥ずかしい。

しかし想定外の出来事のお陰か目がぱっちりと覚めた。シャーペンを握り直し、広げていたノートに板書された、特徴的な書き方をされた英文を書き写して行く。
この調子で耐えるぞ、頑張れ私!と自分を応援する藍であった。
















キーンコーンカーンコーン・・・


一限目の終了を告げるチャイムが鳴り響き、委員長が号令をかけ、終了した。一先ず第一関門突破だ。


「イレイザーにはしっかり伝えとくぜ!」


教壇から降り、ドアから教室を出て行こうとしたマイク先生が此方を見て、ぐっと親指を立てた。此方も満足気に「うん!」と嬉々として親指を立て返した。




















二限目は現代文。担当教師はセメントスというゆったりした喋り方と直方体の顔が特徴的なプロヒーロー。触れたコンクリートを自由に操れる、セメントという個性の持ち主だ。全体的に壁。

板書する度に鳴るカッカッという音は小気味好い。
・・・現代文は私の得意分野。何せ日本人だし。英語よりも睡魔は襲ってこない。このまま午前を終わらせよう!




















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そんなこんなで、ついに4限目も終わり、終了と同時に昼休み開始のチャイムが鳴る。


「やっと終わったぁ…!!!」


やり切った達成感に思わず溢れる本音、固まっていた体を解す為にぐーっと背伸びをする。睡魔を耐え抜き見事に授業を受けた彼女を、嬉々としたオーラが包んでいた。

反省文、無事回避!


「お疲れ様、藍ちゃん!今日は寝てなかったね!」


明るい声と共に此方の机の前まで歩いてきた友達のお茶子。どうやら後ろの席からよく見ていたようだった。
今日の午前授業の辛さを思い返すと、自然と後頭部を軽く掻きながら視線を下の方へ向けた。
ちなみに此処まで必死になっているのは過去にも一度反省文を書かされたことがあるからだったりする。


「お茶子ちゃん…さすがにもう反省文は勘弁というか…これが毎日なんてキツいよ!」


「ははは…藍ちゃんならきっと出来るよ!」


「そうかな…?」


「そうだよ!!」


拳を天井に向け突き上げぶんぶんと腕をふる、きっと彼女なりの激励なんだろう。その優しい気遣いに藍はははっと笑い声を漏らした。


「邪魔だ丸顔!!」


「ひっ!ご、ごめん…」


ドアの前に立っていたお茶子に向かって暴言を吐く、爆発頭の爆豪。それを見て「うげー」と舌を出す藍。しかし本人はそんな反応を気にも留めずドアを開け、さっさと出て行く。

先程ご覧の通り、彼は口がとてつもなく悪く、まさに敵っぽいがこれでもヒーロー志望で実施試験では1位、成績も良い。担任の兄が「餓鬼みてえなマネすんな、能力あるんだから」と言う程だ。それ程ギャップの塊なのだ。黙っていればイケメンの類に入るのに。友達にああやって言うのは良くは思わないが、まあ、なんだかんだで憎めない奴。


「爆豪くん、またあのような暴言を…全く、失礼だとは思わないのか!」


「かっちゃんはいつもああだからね……あっ、そんなことより、食堂に行こうよ!もう並んでるだろうし、藍さんも…」


真面目な委員長、飯田ともさもさ髪を揺らしながら緑谷が爆豪の声を聞いてすぐさま駆け寄ってくる。然し、あの言葉遣いには藍、麗日含めA組の皆は慣れており、話題はすぐ昼休みの時間へと移り変わった。
どうやら、昼飯のお誘いのようだ。


「あっ、そうだね!でもごめん、今日はちょっと一緒に食べる人が居るんだ、また明日一緒に食べよ!」


ごめん、ともう一度掌を合せ謝る藍、すると誘った緑谷は慌てて手をばたつかせ「そそそそっか!謝らなくていいよ!じゃあ、また明日かな…!」と早口で、気遣うように笑顔を浮かべた。その頬は僅かに赤く染まっており、女子慣れしていないのが一目で分かる。これでもまだ、マシになった方だったり。


「うん、じゃあ!」


藍は時計を見ると、急いで3人の友達に手を振り教室を走り出て行った。そんな慌しい様子に残された3人はその背中を見送りながら、1人の女子は首を傾げた。


「…相澤先生と食べるのかな?」


「うむ…その可能性もあるが、藍くんにも付き合いというのものがあるんだ。無闇な詮索はしないでおこう。」


「そうだね…」














「職員室にいるかな?」


クラスメイトの予想は見事に当たっている事は、まだ誰も知らない。