枕元をガサゴソとやっていた彼は、リモコンを取り出すと部屋の電気を真っ暗に消してしまった。
カーテンの隙間から外灯の明かりが忍び込んでいるが室内は真っ暗だ。
「おやすみ」
「え、お、おおやすみ?」
彼が俺の胸に抱きついてきたかと思うと、こちらが抱きとめるより早く就寝の挨拶をされ、思わず応答してしまった。どういうことだ?
腋の下辺りにある彼の頭がもぞもぞと動いたかと思うと、ちょうどいいポジションを見つけたのか、小動物のような動きが止まった。
丸まった彼の背中に手を回していいものか悩んでいたが、それもつかの間のことで、すぐにスースーという規則正しい呼吸音が聞こえてきて背中に回そうか彷徨っていた腕を力なくベッドに投げ出した。

「寝て、る?」

俺からは俯いて見える彼の顔を薄暗闇で確認することは出来なかったが、規則的に上下する背中、一定の安らかな息遣い、力の抜けた手足・・・寝ているとしか思えない。
「・・・のび太かよ」
いつも講義の時にあくびをかみ殺している彼は、友人同士で飲み会だレポートだと集まった時もわりとすぐに眠ってしまうが、今日みたいにのび太のように眠ってしまった姿は初めて見た。
子供のようで可愛いと思うし、眠る前のポジション探しは小動物のようで愛らしかった。
でも!でもでも、でも!
昂ぶった感情、破裂しそうな股間はどうしてくれよう。
「ったく、食っちまうぞー」
出来もしないが、気分はそんな感じだ。


お試しの”一晩”は結局ほとんど眠れないまま明けた。
眠っている彼が時折微かなため息をついてもぞもぞと動くのにドキドキし、こんなに眠っているんだからちょっとくらい触ってもいいだろうかと悪魔の囁きに心を動かしながらも、指一本触れることはできず、抱き枕状態での”一晩”。
一体何のお試しだったんだ?
これで何か試されたのか?
忍耐力?
理性?

カーテン越しの朝陽で室内はもう十分に明るいが、彼が目覚める気配はなく、動くこともできない抱き枕の俺は答えの見えない”一晩”について悶々と考えていた。
「んー・・・」
俺の胸のところで彼が小さく伸びをする。どうやらやっと起きたようだ。
「おあよ」
まだ寝ぼけているのか舌足らずな朝の挨拶がキュートだ。
彼の柔らかい髪の毛にわずかに寝癖がついているのも愛らしい。
「おはよ」
寝ている彼も可愛かったが、やっぱり起きている時が一番可愛い。


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