入れ替わるようにユニットバスに入った彼を待つ間、やはり今夜のことを考えてしまい、悶々とした気持ちにムスコサンも回復をみせ、今は胡坐の間で緩く頭を擡げている。
いつも仲間で泊まる時には雑魚寝するのだが、コタツもなければ客用布団もない彼の部屋でどうすべきか迷い、結局シングルベッドに寄りかかってテレビを見ながら待つことにした。
人気のバラエティ番組で面白いんだろう。でも、ダンボになった耳はテレビではなくガラス戸の向こうのユニットバスの音しか集音しようとしない。
ガタンッ、キキュッ、そんな些細な音がするたび、期待と不安と興奮で身体がびくりと震えてしまう。

”一晩”って”一晩”だよね?
つまりは”据え膳”?
付き合う前にカラダの相性を確認しましょうって大胆な誘い、でいいんだよな?
友達期間があるとはいえ、付き合ってもないのに身体を重ねていいんだろうか?
あぁ、でも、セフレはやだ。
絶 対 ヤ ダ
愛し愛されるラヴラヴカップルになりたい。

悶々としていた耳に『ガチャッ』とユニットバスの扉が開く音が飛び込んできて、思わず背筋を正して『テレビを見ています』という姿勢を作ってしまった。
ガラリという音とともにガラス戸が開くのが目の端に映る。
「お待たせー」
ロンTに下は高校時代のジャージというラフな格好の彼が、髪の毛をタオルで拭きながら前を横切る。
「ドライヤー使っていい?」
「ん、いいよ」

高校時代に部活をしていた頃から変わらない俺の短髪は、肩にタオルを引っ掛けてボーッとテレビを見ていればいつの間にか乾いているが、いつもスタイリッシュにまとめている彼のやや長めの髪の毛はそうではないらしい。
背を向けた彼が、しなやかな髪の毛にドライヤーを当てる後ろ姿が艶っぽい。
ゴォーゴォーというドライヤーの音にも負けず、ドクドクと高鳴る心臓の音が耳の奥で低く響いている。

血圧が上がって、心拍数が上がって、どうにかなってしまいそうだ!

”据え膳”?
これって”据え膳”ですか?!

「おしまい。悪かったな、テレビ見てたのに」
「え、あ、いや、だ大丈夫!」
カチッと音がしてドライヤーの音はやんでいた。
今日何度目かの俺の間抜けな応答だけが、狭いアパートの部屋に大きく響く。

しばらく隣に座ってテレビを見ていたが、その番組も終わってしまった。
・・・正確にはテレビは見えていなかったけど。意識はずっと右側に座る彼へと向いていましたから。
就寝にはいささか早い時間。
「寝よっか?」
「う、うん」
楽しそうにテレビを見ていた彼にどこで”そーいう雰囲気”に持って行けばいいかと悶々としていた俺に、テレビを消してあっけらかんと誘ってきた彼は、あまつさえ、いそいそとベッドに潜り込んでいる。
ドキドキバクバク心臓と股間が破裂しそうになりながら、彼の隣に滑り込むとシングルベッドがギシリと鳴いた。


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