「ごはん、どーする?」
まだ起きたくないのか、俺の胸に顎を乗せて上目遣いで聞いてくる。
「あー・・・その前に、その・・・」
「・・・ん?・・・あ!うん!えと、俺と付き合って下さい」
一瞬考えた顔をした彼が、突然起き上がるとベッドの上に正座して頭を下げられた。
狭いベッドなので、彼の頭は俺の腹にドシリと刺さったんだが。

「ほ、本当に?」
「もちろん」
顔を上げた彼が満面の笑みで笑った。
「やった!」
思わず彼の頭を抱きかかえていた。
俺にしては大胆な行動だったが、彼も俺の背中に腕を回して抱きついてくる。

胸の愛しい温もりを抱きしめながら、俺の頭を占めていたのは疑問だった。
・・・昨夜の試練は何だったのか?
しかし、その疑問はすぐに解決された。

「こんなに寝たの、久しぶり。真太郎(しんたろう)と寝たら、すげぇよく眠れそうって思ったんだー」
俺の胸に顔を埋めたままの彼が、弾んだ声でそう言った。
「真太郎といると何か気持ちいいし、眠くなるなぁって前から思ってたけど、やっぱりそうだったんだ」
クスクスと笑っているが俺には何のことかわからない。

「真太郎は俺の精神安定剤で安眠剤なんだよ。あー、付き合ったらいつでも真太郎と眠れるね!」
まるで幸せを噛みしめているかのように「うんうん」と頷く彼。
楽しそうで幸せそうで、そうしているのが俺の存在かと思うと嬉しいが、彼の言ってる内容が理解できてもしたくない。

つまり、俺が一晩かけて試されたのは忍耐力でも理性でもなく、抱き枕としての能力?
抱き枕検定に合格したということか?

言葉を発せずにいた俺に気付いたのか、胸に埋めていた顔を上げた彼は優しく微笑んで俺の瞳を覗き込んできた。
「勘違いしないでね。ちゃんと好きだからね、真太郎」
「お、俺も!俺も好き!すげぇ好き!」
「ちょ、苦しいよ、しんたろー!」
苦しいと言いながら、抱きしめられた腕の中で彼もクスクス笑っている。

抱き枕でもいいし、精神安定剤も安眠剤もいいけど、たまにでいいから、君の性欲増強剤とか催淫剤とか媚薬とか、そういうものにもなりたいな。

でも今は、この幸せを抱きしめて、ゆっくり眠りたい、かな?

2010/02/25end


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